第19話 とくべつなちょこれーと
「あのクソ医者許せね―ですわ。いったいいつまで私を待たせるつもりですの!」
メア様はおこっていました。さっきあった医者がひどいのです。
いつまで経っても店を辞めないのです。
「これじゃ、ロンドンの平和が守れませんの。」
あれは悪いお医者さんなのです。
やっつけなければいけません。
うざかったからお父様に言いつけると言ってきたメア様ですが、そんなことはできません。
お父様はいそがしいのです。たいへんなのです。
「ネリーナ、どうしたらアイツをやめさせれるますの?」
なんだかネリーナは元気がありません。
嫌なことでもあったのでしょうか。
「ネリーナ! 聞いてます?」
「あ、聞いてましたよメア様。今日はとびっきりのチョコレートを食べれるという話ですよね?」
ネリーナは話を聞いていません。
これにはメア様もとってもムカつきます。
「聞いてなかったんですの!? なんで聞いてないんですの! ほんとにポンコツメイドですわね。」
「えへへ、すみません」
やっといつものネリーナに戻りました。
これにはメア様もちょっぴり嬉しい気持ちになります。
「ポンコツメイドのネリーナ。」
「はい…」
「今日はお前が言ったとおり、今からチョコレート屋さんにむかいますの。」
「はい…」
「私思い出しましたの。前回チョコレート屋さんのおじさんがなんて言ってたかを。あなたは覚えてますの?」
「はい…」
「はいだけじゃわかりませんわ! ないようを言ってほしいですわ!」
「えーと、『今度きたときは特別なチョコレートを作りますので必ず来てくださいね』でしたっけ?」
「わかってますのに、なんで最初にいわなかったんですの! クソ医者のところはどーせあとでも行きますのに!」
メア様なんだかまたムカついてきました。
ネリーナはやっぱりクソメイドです。
知っているなら初めからそっちに連れて行って欲しいものです。
悪いお医者さんのところへはどーせいつも二回はいくのです。
もし特別なチョコレートが無くなってしまったらどうするのでしょう。
「えー言いましたよぉー。でも先に医者と決着を付けますわ! って自分で言ってたじゃないですかー」
ネリーナはメイドの分際でメア様に文句を言ってきました。
これは温厚なメア様でも許せません。
「ぴーぴーうっぜーですわね! それ以上言うなら明日から他のメイドと交換しますわ。もう帰っていいですわよ。いなかに帰るじゅんびでもしてるといいですわ。」
ネリーナからの返事がありません。
きっとよっぽど自分のしたことを反省しているのでしょう。
「ネリーナ?」
後ろを見てもネリーナの姿がどこにもありません。
「チョコレート屋さんに着きましたわよー!」
大きな声を出しても出て来ません。
隠れている訳ではないようです。
ネリーナはどこかに行ってしまったようです。
まさか本当に居なくなってしまうとは思いませんでした。
「せめて家までは送ってけですの。まったく、非常識なメイドですわね。」
ネリーナは今までのメイドの中で一番長い付き合いでした。
ですが、ここでお別れのようです。
メア様はちょっぴり悲しくなりました。
「クソメイド…。」
「今日はもう、チョコレートだけ食べて帰りますわ。」
今日のメア様には特別なチョコレートが待っているのです。
あまり気を落とす必要はありません。
きっととっても美味しいチョコレートが待っているはずです。
「おっさーん! いませんのー?」
なにやら今日のチョコレート屋さんはちょっと静かです。
最近のチョコレート屋さんはメア様のために人をあんまり入れていませんでした。
けれども今日はもっと人がいません。
やっぱり特別な日なのです。
「あ、い、いらしゃいませ。」
「ん? お前誰ですの? なんでここにガキがいるんですの?」
目の前にはメア様と同じぐらいの男の子がいました。
「お、お父さんが奥にいます。き、来てください」
オドオドした男の子です。
なんだかずっとブルブルしていては気持ちが悪いです。
メア様は偉いのできっとこの男の子には敬い過ぎているのでしょう。
「はぁ。しかたありませんわね。」
男の子が扉を開けるといつものおじさんがいました。
だけどなんだか気分がよく無さそう。
よっぽどチョコレートづくりに時間をかけたのでしょう。
「やぁ、よく来てくれました。カシミヤ様」
「来てやりましたわ。早く前に言ってた特別なチョコレートを出すんですの!」
「承知いたしました。おい! ピーター。早く持って来い」
なんだか機嫌も悪いのかも。
でもニコニコしているのできっと機嫌はいいのでしょう。
「特別なチョコレートとはどんなものなんですの?」
「それは見てからのお楽しみですよ。カシミア様」
「楽しみですわね。早く持ってこいですの」
「もう少々お待ち下さい。でも、そうですね。一つだけ教えるならコーヒーと一緒に食べると、とっても美味しいですよ!」
「コーヒーですの? 私コーヒーはあんまり好きではありませんの。」
メア様は一度お父様のマネをしてコーヒーを飲んだことがありますが、全然美味しくなかったのです。
あれと一緒にチョコレートを食べると美味しくなるのでしょうか?
それであれば、お父様がよく飲んでいる理由がわかります。
「それが、びっくりするほど美味しいんですよ! ぜひ一緒に食べてほしいです」
「そこまで言うなら、食べてあげますわ。」
トントンと足音が聞こえてきます。
男の子が特別なチョコレートを持ってきたのです。
「遅い! いつまで待ったと思ってるんだ!」
おじさんがうるさくなりました。
しかし、チョコレートと飲み物はしっかり持ってきています。
「ささっ、メア様。こちらをお食べ下さい」
「ん? これはいつものチョコレートと何が違いますの?」
「こちらのコーヒーと一緒に食べていただければわかりますよ。早くお食べ下さい。」
「はぁ、わかりましたわ。」
パクリ
しかしメア様は違いが全然わかりません。
「もしかして騙したんですの? 違いがわかりませんわ。」
「まだ、こちらのコーヒーを飲んでおられませんよ?」
メア様はすっかり忘れていました。
このコーヒーと合わせるととっても美味しいと言っていたのでした。
「そうでしたわ…」
ゴクリ
確かにこれは前飲んだコーヒーよりとっても甘くて美味しいのでした。
「これ、確かに普通のコーヒーではないようですけど正直そこまで美味しいとは思いませんわ。この程度の物を特別なチョコレートと言っていたんですの?」
これには流石にメア様も残念です。
とっても美味しいと聞いていたのに。
「いえいえ、滅相もございません。もう一度こちらのチョコレートをお食べになればわかるはずですよ」
メア様はちょっと安心しました。
この程度で特別なチョコレートを名乗られていたのでしたら困ってしまうところでした。
パクリ
しかしメア様には違いがわかりません。
「でも、これ…なんに…も……▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓
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フフ…バカなメア様。
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