【試作】知らずに再会した姉妹の話
閃矢 亮晃(せんや りょうこう)
【試】第1話
――子供の頃の私は、絵を描く事が好きだった――
「はい、描いたよ」
「わーい♪おねーちゃん、ありがとー♪」
子供の頃、物心がつき始めた妹に——
「おねーちゃん、えをかいてー♪」
…とせがまれて、絵を描き始めた。
最初の頃は妹にせがまれたせいもありいい気分ではなかったが、私の描いた絵を見た妹の嬉しそうな笑顔がきっかけで、気が付けば、絵を描くのを好きになっていった。
「(んー…何でそんな昔の事を思い出したんだろう……)」
彼女の名前は、『新崎 朋美(にいざき ともみ)』その日彼女は、同人イベントのサークル席にいた。
同人イベントの会場は結構な人だかりで賑っている。しかし、朋美の席の前は誰も並んではいなかった……
サークル参加もまだ2度目だし、そんなに知名度もないからまぁ仕方が無いかなぁと朋美は思いつつもそれはそれで寂しさを感じていた。
ただ、朋美自身にとって、仕方がないでは済まされない出来事が起きようとしている。
「(んっ……)」
それは尿意だった――
イベント開始から結構な時間も経っていたし、その間トイレには行っていないので無理はないのかもしれない。ただ、大人である朋美にとっては、漏らしてしまうのは仕方がないで済ましたくない。
ただ朋美自身、何も対策をしていない訳では無い。ちゃんと穿いてきている。
――おむつをだ。
同人イベントはトイレが鬼門と言うか「トイレが最大手」なんて言葉があるぐらい大変なのはわかっていたので、前回の初参加もちゃんと穿いてきていたが、何もなく終わったのでその時は拍子抜けしたぐらいだったが、今回はちょっと違う。
それなのに…それなのに、私の頭の中に、天使と悪魔が囁いてくる。
天使は――
「ダメよ、我慢しないで。ちゃんとおトイレに行きましょう。体にも良くないし……」
…と、優しい声で囁いてくる。
そして悪魔は――
「ふふ~んwこんな会場の中で誰にも気づかれずにおむつにおしっこするのは快感だよねぇ~ww」
…と、若干煽るような、それでいて引き込まれるような声で囁いてくる。
どっちの言い分も分かるだけに、決断が出来ずにいた。いやむしろ、私の中の天使と悪魔が争っている様(さま)を私自身が楽しんでしまっている。
「(あぁ…私って…んっ…駄目な…大人だなぁ……w)」
こんなことになったきっかけは、子供の頃にあった出来事があって、それを元に自慰行為に今も走ってしまう。今でも大好きな妹の事を想いながら。
だが同時に、こんな情けない姉を妹には見せたくないと、中学を卒業と同時に全寮制の高校に進学した。高校生活は情けなさに輪をかけるようにぱっとしなかった。そんな状態から年月が過ぎてしまった。妹とはそれ以来会っていないし、実家にも帰っていない。連絡はお母さんにたまの電話とメールぐらいだった。
そんな罪悪感を思い出して、現実に引き戻された。結果天使が勝ったことになるのだろうが、納得がいく形では無いので、物凄くもやもやしている。
「(だめだ…トイレに行こう……)」
そう決めて、立ち上がろうと足に力を入れたその時――
「すいませーん。これ(見本誌)見てもいいですかー?」
少し可愛らしい女性の声だ。朋美が上げると、少し小柄な、魔法少女のコスプレをした女性が立っていた。
「あ、は、はいどうぞ」
朋美自身、今まで数冊しか捌けていなかった事もあり、こういう風に声をかけられる事は初めてで物凄く戸惑ってしまったが、その辺はごまかして、女性に見本誌を見せた。
「へぇー……」と、その女性はひとつ間を置いた後に——
「これいいですねー。新刊と既刊ひとつずつ下さいー」
そう言って満面の笑顔で言った瞬間、私の中で何かの糸が切れたかのように下腹部の力が抜けた。
(しゅう、しゅうううー)
「(……!)」
朋美の下腹部、おむつの中に熱いものが飛び出した後に、ダムが決壊したかのように一気に広がっていく、朋美は熱の広がりを止めようと力を入れるが、止まる事は無く、熱いものはおむつの中にどんどん広がっていく。
「あ……は…はい、1000円で…す……」
体中が震えるのを必死に堪えながら悟られないように、1000円札を受け取り、新刊と既刊、そして名刺を添えてコスプレの女性に手渡した。
「わぁー♪有難う御座いますー。良かったら私もSNSやっているんでフォローして下さ—い♪」
コスプレの女性は、そう言って私に名刺を手渡して笑顔で去っていった。
「はぁ……」
朋美はおむつの中におしっこをしたことがバレなかった安堵で、そのまま椅子に座り込んだ。そして朋美には、別の感情がふつふつと湧き上がっていった。あのコスプレの女性の事だ。
私は、その女性の名刺を見る。そこのHN(ハンドルネーム)は——
【tomoちゃん♪】と書かれてあった。
「(まぁ、そんな訳ないよね……)」
結局イベントは無事に終了した。
そして朋美はおむつを穿き替えず、そのまま帰宅の途に着いた。帰ってきて玄関に荷物を放り投げ、トイレに一直線に向かった。おしっこをたっぷりと含んでぶよぶよになったおむつを下げ、トイレの便座に腰かけると、あのコスプレの女性の事を想い出した。
「…大好きな妹の聡美みたいだったなぁ……」
とわ言え、もう妹とは7年ちょっと会っていない。子供の頃から妹は、元気で明るく、人々を笑顔にしてきた。それに対してこんな情けない姉を妹には見せたくないと、中学を卒業と同時に全寮制の高校に進学した。高校生活は情けなさに輪をかけるようにぱっとしなかった。そんな状態から年月が過ぎて10年ちょっとが過ぎてしまった。妹とはそれ以来会っていないし、実家にも帰っていない。連絡はお母さんにたまの電話とメールぐらいだった
【試作】知らずに再会した姉妹の話 閃矢 亮晃(せんや りょうこう) @r_senya1008
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