第40話 体育祭の表側
「さあさ、みんな盛り上がっているかい!みんな疲れ気味に見えるぞ~‼あ、因みに天音さんは、まだまだよゆーだよ~」
実況席から天音の、ハイテンションなアナウンスが響き渡る。
体育大会は順調に進められ残す競技は、生徒会考案の競技のみとなっていた。
順調と言ってもそれはあくまで、全体を通してのこと。細かく見れば、ハプニングなどあったが、それはまた別の機会で……
さて、話を戻そう。
生徒会考案の種目、それは
「体育大会も大詰め!最後の種目は、借り物競争だよ~!」
そう言って天音は、続けざまにルール説明を行う。
「ルールは簡単!まずはチェックポイントまで走る。次に、チェックポイントに設置されたボックスから一枚紙を引くよ。そしたら、紙に書かれたお題と一緒に、ゴールまで走ってね~……って言う訳だよ。簡単でしょ?」
天音は、普通の借り物競争と変わりはないと説明する。
がしかし、実際はそうでもない。
具体的に違う点は、もうじき競技が始まるので省くが、一つだけ言える事がある。
夜海を除いた生徒会、つまり女子たちだけで、お題を考えている。そして彼女たちはある目的を達する為だけに、お題を考えていた。
「さぁ~て、前座でこれ以上、出場選手を待たせるのは、悪いからね~。合図よろしく~」
その言葉を合図に、係がピストルを鳴らした。
と言っても、公平なスタートにするために、初めの人たちには現在の順位順に紙を引いて貰い、そこから一斉に始めて貰う事になる。
先程の合図は、殆ど形だけなのだ。
今さらながら、チームと点数差などの説明をしよう。
チームは四つ、赤・白・青・紫。
これは学部ごとに分かれており、三年生の代表、つまり団長に当たる人物たちによる、くじ引きで色が決定する。
ちなみに点数は、赤・スポーツ学部 537点 白・総合学部 512点 青・商業学部 481点 紫・芸能学部 529点
さて、借り物競争に出場しているのは、各チーム三人。各学年から一人が参加していると言う事だ。
この競技の点数内訳は、一着 100 二着 50 三着 25 四着 12 五・六着 0
四チームしか存在しないのに、六着まである事に気付いただろうか?
その理由は簡単だ。
この競技には、教員チームと生徒会チームが参加しているのだ。
さて、わたくしの補足説明はこのくらいにして、後は天音の実況に任せましょう。
「ついに始まった、最後の種目『借り物競争』!
今さらだけど説明するね!
この種目は一チーム三人のリレー方式だよ♪
まずは第一走、トップは赤組!元気に跳ねるポニーテールがチャームポイントな女の子、柴仙巡ちゃん!さすがスポーツ学部だね!
続くは、白組!小さな体は、まだまだ成長の途中!可愛いスマイルは、一部の男子を虜に♪平田潤ちゃん!いやー、実は天音さんも潤ちゃんにメロメロ!あの笑顔は卑怯だよ~
っと、潤ちゃんのすぐ後ろにいるのは、青組!学校の噂で知らないものは無い⁉事実彼女は色んな事を知っている!小條聖ちゃん!聖ちゃんにかかれば、あなたの恋愛事情は丸裸!
おっ!何人か心当たりあるみたいだね~
実況席からも分かるぐらい、目に見えた反応をありがと~
さて次は、紫組!大好きなお姉様にどこまでも付いて行きます!ショートポニーが目印、早乙女神楽ちゃん!大好きなお姉様は、チームのテントから、手を振って応援しているぞ♪
ここでようやく妨害チーム、先生チームと生徒会チーム‼
ん?何で妨害チームがいるのかって?
そりゃ面白いからだよ‼
さてさて、先生チームからは新任教員、小林美月先生!……それ以外、分かんないや
うん、次いこ
えーっと、生徒会からは我らが会長!柑條美玖!みんなの頼れるお姉さんを目指して、今日も頑張ってるぞ☆」
「こらぁ天音‼真面目にやりなさ~い‼」
「ありゃ?良い感じじゃなかった?出場者の紹介なんか、的確でしょ~」
「聞いてる私たちが、恥ずかしくて、集中できないよ⁉名前だけで良いから!余計なこと付け足さずに、実況してよ‼」
「あはは~ゴメンね~
じゃ、気を取り直していこう~
えぇっと、第一走者の人は今呼ばれた順に、お題の紙を引いていくよ
うんうん、みんな引いたね?そしたら一斉に開いて、スタートだよ!
さぁそれぞれが、お題のものを探して動き回る!
あ、そうそう。お題のものを借りられたら、ゴールにいる審判に紙を渡して、確認して貰ってね~
審判がOKを出したら、次の走者と交代だ!
柑ちゃんにも怒られた事だし、ここからは気になる借り物をしてきた人の、お題内容を推測しながら実況するよ♪
お!そうこう言ってたら、柑ちゃんが旧校舎の方へ向かっているね
ちなみにこの旧校舎、今では暁先生のラボとして利用されていて、別名暁荘って言うんだよ~
となるとお題は、暁先生の発明品かな?
おーっとその間に、他のチームは順調に借りて来ているみたいだ!
けど判定で不可、が出ているチームもいるね♪
みんな頑張れ~
と、またまた言っているうちに、柑ちゃんが帰って来たね♪
柑ちゃんが借りてきた…て言うか連れてきているね!
あ、分かったよ!
えへへ、実はね、お題ボックスの中にはいくつか、難問も混ぜているんだけどね~
柑ちゃんはその中の一つ、生徒会の引き籠りを連れてくる、を引いたみたいだね♪
この問題は2段階で難しいよ~
まず役員の中でも一部の人しか、生徒会に引き籠りがいることを知らない
この段階で殆どの人がギブアップだよ~
次に引き籠りこと、赤城莉桜の居場所を知っているか
これに関しては、先生方と生徒会しか知らないよ
つまり、ほぼ無理難題なのだよ‼
あ~でも、柑ちゃんが引いたら、意味ないじゃん!」
「真剣勝負に、時の運は付き物なんだよ!」
「はぁ~い、柑ちゃんからありがたーい、格言?を頂いたよ
気付いたら全チーム、第二走者に代わっているね
あ、そうそうここでちょっと、雑学話を一つ
今度方配られた、生徒証明書兼学園支援端末『SPT』
あれを作っているのは、理事長兼生徒の赤城莉桜なんだよ~
知らなかったでしょ?
実は最近、暁先生からチータが理事長の一人だって、教えて貰ったんだよ
お!生徒会チーム第二走者、フーちゃんが男を連れてきたね!
え?さっきの雑談の方をもっと聞きたい?
んー、チータが睨んでいるからムリ
さ、競技に戻ろう!
いまのやり取りの間に、アンカーに交代してるね~
現状優位は赤、続くは先生、青、白、生徒会、紫の順に見えるね♪
けどお題によっては、まだまだ順位は入れ替わるから、最後までみんな頑張れ~
と、一番にゴールに来たのは先生チームだー!
さぁ審判の判定は……クリア!先生チームが1着だよ‼
わずかばかり遅れて、赤もゴール!
お、白もゴール判定だね
残るは青、生徒会、紫だよ♪
最後まであきらめず頑張れ~
おぉ!青のさくやんと生徒会チームのユッキーが、同時に審判へ!
判定は………生徒会チームがゴール!
さくやん、抗議しているみたいだね
えっと……あぁ、さくやん、それ自分の電卓でしょ?裏に名前、入ってるし
借りてきてないからアウトだよ、って言うか体育祭なのに、電卓持ち歩いていたの⁉」
「ウチは、商売道具は常に、持ち歩いとるんよ」
「…商売人だね~
さて、この段階で青チームと紫チームは、5位と6位、つまり0点が決定!
競技の終了だよ!
改めて1着、先生チーム
2着、赤チームスポーツ学部
3着、白チーム総合学部
4着、生徒会チーム
5着以降は、青チーム商業学部、紫チーム芸能学部
いや~、実況した人以外も結構、面白い事になっていたね~
それじゃこれにて、生徒会主催借り物競争は終わりだよ」
そう天音が締め括ると、選手たちは退場し、グランドの整備が始まる。
このあと特に問題も起こる事なく、体育祭は無事、終わりを告げるのであった。
ちなみに赤チームのスポーツ学部が、2位と約50点の差をつけて、優勝しました。
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