第35話 お泊り会~包囲網編~

「それじゃあお待ちかね、恋バナを始めようか!」


晩ご飯を食べ終え、就寝の準備が終わったところで美玖が張り切って声を上げる。


「でも美玖先輩、恋愛話をしようと言われて、素直に話すとは思えませんけど……」


「フフフ…そこは我に秘策あり、だよ!」


美音がおずおずと意見を述べると、美玖は不敵な笑みを浮かべて、自信満々に答える。


「議題に使うのはズバリ、ミー君をどう思っているか、だよ!」


「そんなことだろうとは、思っていたわよ。……美玖、あなた最初から……」


「言うんじゃないよ?……遅かれ早かれ、可愛い後輩のために手を貸すつもりだったしね?……」


夜海をどう思っているか、それを議題にすると美玖が言うと、美音が動揺しているのが窺える。

その表情を盗み見た美玖、雪乃、月乃、莉桜の四人は、お互いに目を合わせ、頷き合う。


「それじゃあ、始めようか!まずは、天音から…って天音?」


美玖は天音に声をかけるが、返事がない。

肩を揺すってみると、天音が仰向けに倒れる。


「も、もしかして……」


「はい、天音先輩は、寝てます…」


「……気を取り直して、月ちゃんいってみよ!」


天音の早々の離脱に、美玖は戸惑いつつも月乃に話を振る。


「私、ですか?……そうですね…夜海先輩は、大好きな、先輩です」


「そ、そうなの⁉」


「美音?どうしたの?そんなに、焦って?」


「えっ!そ、そんなことないよ!それより、す、好きなの?夜海先輩のこと」


「うん。夜海先輩は、姉さまみたい」


「つまり、遊んでくれるお兄さん?」


「…はい。たぶん、それが、一番、近いです」


美玖が月乃の述べたい事の確認をすると、月乃はそれを肯定する。

それを聞いた美音は、胸を撫で下ろしていた。


「うーん、そっかそっか。なら雪乃は?」


「私?そうね……一緒にいて飽きない人、かしら?」


「ほうほぅ、その心は?」


「深い意味はないわよ。けど、彼を見ているとなんだか、癒されるのよね」


ウットリとした表情を浮かべつつ、話す雪乃。雪乃の話を聴いた美音は、共感したように頷いている。

その様子を美玖は横目に見て、美音にバレないようにニヤついていた。


「うん、うん。それじゃぁ、莉桜はどう?」


「私は…そう、初めての友達、かな?私って、現実でもゲームの世界でも、友達っていなかったんだよね」


「あれ?でも、リオは、ネットゲームでは、有名プレイヤーで、信者も、いますよね?」


月乃の言う通り、莉桜のネットゲーム界隈でのキャラ・リオは、卓越したセンスで様々な伝説を打ち立てた事によって、伝説級のゲーマーとして崇められていた。

そして現実の彼女は、学生とは思えない頭脳を以てして、既に企業からの仕事を受けている。


「アレはただの信者。リオを崇めるだけで、対等に接してくれる人は居なかったよ。唯一、古詠だけが違った。まぁ、単純にリオの事を知らない、初心者だった訳だけど……でも現実とゲーム、どちらにおいても初めて友達になった人だよ」


「でも、友達は増えたでしょ?」


「そうだね。本当にそうだよ。柑條たちはかけがえのない友人だね」


「…臆する事無く言われると、なんか恥ずかしいね///」


照れ顔を浮かべ、頬をかく美玖。


「えーっと、よし、最後に風ちゃん!」


「わ、私ですか…そうですね」


美玖の振られると、考えるそぶりを見せる美音。

しかしこの場にいる者には、美音が古詠に恋している事は、バレている。


「ま、聞くまでもなく、ミー君の事が好きでしょ?」


「な、なな、ッンン。ち、違います。そ、そそんな事、ありません」


「違うの?なら、夜海先輩の事、嫌い?」


「《big》そんなわけありません‼《/big》」


明らかに動揺している美音。

その様子が、好きであると言う事は如実に表していた。


「うーん、見てたら分かるかな?」


「そうね。私たちの中では、隠さずに話した方が良いくらいかしら?」


「………そんなに分かりやすかったですか?私…」


「大丈夫。夜海先輩は、気付いて、無い。……でも、それが、逆に、可愛そうだから…」


「だから私たちも、協力するからね。歌風の恋が実る様に、サポートするから」


『お任せください』


美音が思いを述べるまでもなく、周りが協力を申し出る。その中には、AIのナナまで居た。


「いくらアプローチを掛けても、ミー君から告白して来る事は、無いと思うよ?ミー君が好きなら、自分から伝えなきゃ、一生伝わらないと思う」


少し戸惑いを見せる美音に、美玖は優しく述べた。

やがて美音は一同を見渡し、覚悟を決めた。


「…分かりました。皆さん、よろしくお願いします。…私、夜海先輩の卒業式までに、告白してみせます‼」




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