第34話 お泊り会~お風呂編~

「ちょ、天音!やめなさい」


「ふふふっ、言われてやめると思っているのかい?」


「キャッ!撫でるように、脇を触らないで」


「いや~、前から思っていたけどユッキーって、小振りでも良い形だよね~。それに引っ込む所は引っ込んでるし。ツッキーとフーちゃんはポテンシャル高そうだし、これからに期待だよね~」


「………」


最後に浴場にやって来た莉桜だが、中の惨状を見て言葉を失っていた。

そこでは、天音によって骨抜きにされたと思われる三人、美玖、月乃、美音が浴場の床に倒れている。

さらに現在進行形で襲われている雪乃は、最後まで抵抗していたようだが、次第に抵抗が弱くなり、崩れ落ちた。


「一番の驚きはやっぱり、柑ちゃんだよ!着痩せしていて、全く気づかなかったけど、背が低いのに胸は大きいって、どういう事?もしかして、栄養は全部胸にいってるの?だから背が低いのかな?」


《xbig》「余計なお世話だよ⁉」《/xbig》


天音の容赦ない分析に、美玖が復活する。


「いい加減にしなよ、天音!何で持っている人が、持たざる人を辱めてるのさ!普通、逆でしょ⁉」


「いや~、つい。だってみんな可愛いんだもの。愛でないと損でしょ?」


堂々と腕を組んで言い切る天音。

身長を含め、バランスの良い体型の天音を『ぐぬぬ』と唸り声を上げつつ、見つめる美玖。


二人の背後の湯船では、いつの間にか復活した雪姫姉妹と美音が湯に浸かっていた。


「……二人とも、いー加減にして下さいね?」


「え、っと…」「り、莉桜?」


いまだ睨み合いを続ける二人に、莉桜が声を掛ける。ただその顔は、笑顔であるが、笑ってはいないものだった。


「い・い・で・す・ね?」


「「は、はい……すみませんでした」」


二人はようやく大人しくなる。


「まったく、馬鹿な事して風邪なんかひたら、それこそ見てられないわよ」





















「えーっと、ようやく落ち着いて湯にも浸かれた所で、皆さんに話があります」


天音たちの暴走(?)も収まり、全員で湯船に浸かっていると、莉桜があらたまって話し始める。


「みんなは私が、学校のシステム関連を制御しているの、知っているよね。中でも、居場所を知って居たり、会話を聞いている方法に疑問を持った事はない?」


頷く一同。そして、もちろんあると答える。

それを見て莉桜は、苦笑いしながら語る。


「実はその事について、みんなに聞いて貰いたいんだ。簡潔に言うとね、SPTから全部情報は得ていたんだよ」


「でも赤城先輩、校内の監視カメラは?」


「そうです。あれで、監視、していたのでは?」


「もちろんあのカメラも、動いてはいるよ?ただあれは彼女が、現実を見るために使っているんだ」


「「「「「彼女?」」」」」


莉桜の言葉に、全員が首を傾げる。

すると莉桜は何処からか、SPTを取り出す。そして全員に、画面が見えるように持つ。


『初めまして、皆さま。私は自己学習システム搭載型、議事録管理AI、ナナと申します。今まではお母さまの代わりに生徒会の議事録を付けていたり、校内のカメラや皆さま方のSPTを通して、密かに皆さまと生活しておりました』


「しゃ、喋った⁉」

「AIか~」

「成る程ね。これがあなたの隠し事、と言う訳ね?」

「さすが、チータ先輩。AIも、作っていた、なんて」

「でもなんで、このタイミングで発表したんですか?」


一同が様々な反応をする中、美音がもっともな疑問を口にする。


「いやタイミングは、いつでも良かったんだ。古詠がいない時で、他のみんながいる時なら」


「?どうして、夜海先輩?」


「あ、そっか、分かった。もしかして、この子をミー君の誕生日プレゼントにするつもり?」


美玖の発言に、頷きを見せる莉桜とナナ。


「ほら古詠の誕生日って」


「七月の十七日、ちょうどサマーフェスティバルがあった日だね」


「「そうだったの?」」「そうだった、ですか?」「本当ですか⁉」


美玖の一言に、驚く一同。それに対して美玖は、すっかり忘れていたと言う。


「サマーフェスティバルの時、柑條と古詠の会話を聞いていたこの子が、彼のサポートをしたいと言ったんだ。そこで、私たち全員からのプレゼントとして、彼女を送りたいんだけど……反対の人がいないかな~って」


莉桜の話を聴き、顔を見合わせる美玖たち。

やがて、頷き合うと雪乃が口を開く。


「いくつか質問、いいかしら?」


「もちろん」


「それじゃあ……なぜ話したの?いつものあなたなら、気にする事なく行動していたと思うのだけど?」


「うん、そうだね。けど今回のは、彼女の望みだからね。それに」


「それに?」


「古詠って、機械系はあまり得意じゃないでしょ?」


莉桜が美玖を見据えて言う。


「そーだね。最低限しか使えないね、ミー君は」


「あ!だから、メールなどの返信、遅いんですね」


「そうだよ。本人曰く、『下手につついて、壊したくない』だって」


美玖が夜海の考えを言うと、周りは納得したように頷く。確かに彼なら、言いそうな事だったからだ。


「そう、だから機械系のサポートを、彼女にして貰おうと思ってね。そうすれば、多少はマシになるだろうし」


「成る程、私たちの連絡の円滑化ね。あとは……どうやって、受け取って貰うつもり?」


「プレゼントって事は、黙っておくつもり。言っちゃうと、受け取って貰えなさそうだし、本人も誕生日の事、忘れていたみたいだからね。誕生日プレゼントって事は言わずに、言い包めるつもりだから」


そう答えると、雪乃は頷く。


「わかったわ。つまり、AIがあなたの管理から、夜海に移ったと考えればいいのね」


「うん、そう言う事になるね」


「分かったわ。私からは以上よ」


「他に何か質問は?」


莉桜が訊ねるが、特に質問は上がらなかった。


『皆さま、改めまして、よろしくお願いします』


『皆さま、改めまして、よろしくお願いします』


こうして、浴場でする必要が合ったのか、謎な話は終わった。


「あ、あのー」


「どうしたの、月乃?」


と思ったら、月乃が挙手をする。


「え、えっと…美音が、夜海先輩の誕生日の、話の辺りで……の、のぼせて、倒れちゃった、ですけど……」


よく見ると、美音が月乃に膝枕をされている。そして空いている方の手で、美音をあおいでいるのだった。

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