第25話空論の続き
「いらっしゃい、古詠。待っていたよ!」
夏休みに入って一週間ほど経ったある日、赤城から話があると言われて、暁荘の赤城の部屋(制御室)に呼び出されていた。
「そーかい。そりゃスマン事としたか」
「いいや、そんな事ないよ。呼び出したのは、私だしね。そう言えば君、夏課題は終わったの?休みに入る前から、他と違って頭良くないから、課題が終わるのに時間がかかるだの、量が多いだのぼやいていたけど?」
「ん?あぁ、終ったよ。フライングしたお陰で、何とかな」
夏休みの課題は、休みになる前から出されそうな所を前もって済ませて置いたお陰で、既に終わっている。
長期休暇の時、前半から中盤を使って課題を終わらせ、後半はゆっくりするのがセオリーだった。だが、今年はそうもいかない。
なぜなら、生徒会の仕事があるからだ。今まで通りで予定を組んでいたら、絶対に課題が終わらなかったよ。
他の役員たちは、あの程度の課題量なら一週間もあれば片付くと言っていた。
やっぱりあれだな。生徒会の連中は、頭がいい奴ばかりだな……
俺って、何で居るのか不思議だね。
まぁ、とにかく周りの連中の事を考えると、自然と量が多いだの時間がかかるだの、ぼやいていた。
ともあれ課題が終わっているから、赤城の呼び出しに応じた訳だ。
「古詠って、何だかんだで、真面目だよね」
「ま、それだけが取り柄って、言えなくも無いし。で、用事は何さね」
「そうそう、古詠ってゲー研の部長と仲良かったよね?」
ゲー研の部長?って言ったら…
「ほら、魔法少女好きの」
「ストップ!タスクだろ。てか、それ以上人の趣味を暴露しようとするなよ!て言うか、どうして人の趣味を知って居るんだよ!」
「え?だって、学校の端末を使って閲覧していたら、そのログが私の所に来て残る様になっているもの。いくらその端末の記録を消しても、こっちで全て記録が残って居るんだから、知って居て当然でしょ?」
「当然でしょ?って言われてもな」
侮れない、て言うか怖いな。マジで学校中の端末は、赤城の目や耳な訳だ。
マジで、敵に回したくない奴だよ……
「取り得ずタスクの趣味については置いておいて、そのゲー研の部長が如何した?」
「古詠、そこで部長と、VRMMOの企画の話をしていたでしょ?」
「あ~ぁ、あったなそんなこと」
「あれを聞いて私、その世界を創ってみたいな~なんて思っているの」
「ほうほぅ、それで?」
「そこでタスクのアイデアノートを、譲って貰いたいのだけど、その交渉をして貰いたいの」
「いくつか、質問していいか?」
「もちろん」
「ノートの事を知って居るのは、覗き見して居たんだろうから置くとして、あんな机上の空論みたいなやつ、出来るのか?」
「出来るのかじゃない、やるんだよ。幸いな事に彼と違って、私には伝手があるし、私だけで殆ど出来ない事もないよ」
こいつ、今サッラととんでもない事を口走ってなかったか?
まぁ取り敢えず、赤城に任せれば可能性はあるって話か。
「次だ、自分で交渉すればいいんじゃないか?」
「それはあれだよ、急に知らない奴から極秘ノートを譲ってくれって言われて、はいどうぞって、渡す人がいると思うの?」
「あー、それもそうか」
確かに、居ないだろうな。俺だったら、警戒するだろう。
「そう言う事で、私の事は言わずに回収して来て貰いたいの」
「ん、交渉は引き受けようか。結果はどうなるかは、保証しないけどな」
「それで問題ないよ。ダメだったら、奥の手を使うだけだから」
「何するつもりだか……まぁ良いか、話はそれだけか?それだけなら帰るが」
そう言って、部屋を出ようとする。すると赤城はもう一つと言って呼び止めた。
「午後から、会長たちとVRとARの試作品のテストをするんだけど、一緒にどうかな?」
「気が向いたら来るよ」
「OK、ならその時はお土産もよろしく!」
分かったと返事をし、部屋を出る。前も思ったが、赤城の奴事あるごとにお土産を要求して来てないか?
まぁ、無視すればいいだけだが、それを聞き届ける辺り、人が良すぎるのか、ただ女子に甘いだけか……
どっちでもいいけど、こりゃあそろそろ、バイトするべきかなぁ………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます