命、紡ぐ者たちよ

@iryslire

第1話 現実の協奏

ずっと何かを忘れている。

目を冷まして、少しして、

私はふと思い出せる気がした。

何年もの昔、きっと私は恋をして、そしてまた

忘れてしまったのでしょうか。



およそ300年前。

生まれて89度目の誕生日を迎えた私に、始まりは訪れた。


「ファナ!長老が呼んでるぞ!いい知らせだ!」


父は、顔からこぼれ落ちてしまいそうなほどに目を見開いて、とても嬉しそうにしていた。


「ふふっ‥お父様?そんなに慌ててどうしたのですか」


「いいから来るんだ!

あぁ、一応神衣に着替えてから来なさい。

知の森ヨゼ・グラニエにて、ヨゼ・ミルスタル知を伝う者達の皆が待っておるぞ」


「な‥なぜですか!?

なぜ私のような若輩者が、

知の森に入ることが許されるのでしょうか!?」


思わず父に対し強い口調になってしまった。


「ファナ!

今はまだ、いい知らせということしかできない。だが行けばわかる!準備をしなさい。」


ここは聖域と呼ばれる大地。

ウェラ・ノアと呼ばれる山合にある、数百年という寿命を持つミトの民が住まうと言うミヨの谷。


何百と死ねない年月を重ねるミトの民は、知の森と呼ばれる大森林の巨木一本一本に、一年の各国で起こった出来事を記していった。


そしてそこには、ミヨの谷にのみ記される、隠された歴史が書かれているという。


それを求め旅する冒険者を、人は「知の冒涜者ヨゼ・ベストラフ」と呼んだ。

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