三十九話 思わぬ援軍
簡単なあらすじ『アトラン族達はもう戦いを始めてしまうそうです……』
「ルー、プチ男、ケロ太、エリマ、それとアルワヒネ。皆、付いてきてくれるか?」
町を守るべく、魔物達と無謀なる戦いを始めようとしているダマレイさんとサチエの何度叫んでも止まらぬ背中を見、俺も決断した。
彼等と共に戦う事を。
確かに、勝率は薄い……だが、サチエをこのまま見捨てるワケにはいかない。誰が何と言おうと俺はそう決めたのだ。
それに、俺がいれば少しは勝てる可能性が上昇するはずだ。例えそれが豆粒程のものだったとしても……無いよりはマシだろう。
そう考え、俺は魔物達に声を掛ける。
魔物達は迷う様子も無く、黙って五匹共がすぐさま前に進み出て来てくれた。
これが無謀な戦いだと、コイツらにも分かるだろうに……そうだと知った上で俺に付いて来てくれると言うんだな。コイツらは。
俺は五匹全員の頭を撫で、アトラン族達に続いて歩き出す……
その前に、俺の様子を見て困惑している三人に声を掛ける事とした。
「ダメですクボタさん!
もっと良い方法があるはずですよ!とりあえず、今は冷静になって下さい……
お願いですから……」
目の前の三流魔物使いが何をしようとしているのか、理解したコルリスはすぐさま俺にしがみ付いてそう言った。
それを見て痛む心を抑え、俺は返答する。
「ごめんコルリスちゃん。でも決めたんだ。
俺も皆と戦うよ……君は二人と避難して欲しい。
ナブスターさん。それとジェリアちゃんも。
コルリスの事、よろしくお願いします」
「クボタ君……」
「……」
それを聞いても尚、コルリスは俺を離そうとはしない。そして二人は何も言わず……いや、言えずなのか、とにかくそのようにして対応に困っている様子だった。
だが数秒後二人はその表情を、何かを決意したようなものへと変えるのだった。
「ハァ……仕方ないわね。私達もやるわよ。
チビちゃん達、準備は良い?」
「僕もそうさせてもらうよ……どの道、協力はするつもりだったんだ。それが遅いか早いかというだけの話さ。
それに、君とサチエ君をこのままにする訳にはいかないからね」
そして二人は言った。
二人には既に事情を説明してはいたが……まさかこんな状況でも力を貸してくれるとは思わなかった。
そうして俺が驚いていると、今度はコルリスが俺の服に顔を埋めた後、声を上げた。
「…………じゃあ、私とケロ太郎君もやります!
私達だって戦います!皆と離れるのは嫌です!」
コルリスもそう言うとは……
だが、流石に彼女はまだ早いように思う。
「え!?いやでもコルリスちゃん……」
「私達はアライアンスでしょう!?
皆がやるんだったら私達もやります!
それに、ここで皆を置いて逃げたりしたら。
私……私……一生後悔すると思いますから」
コルリスは涙声で、しかし力強くそう宣言した。
……そこまでされたら、承諾するしかなかった。
ただし、彼女は条件付きで。
「…………分かった。
でもコルリスちゃん。君は危なそうだと思ったらすぐ逃げる事、それが連れて行く条件だ」
「……わかりました」
そうして俺は少し不服そうなコルリス、ジェリア、ナブスターさん、そしてアトラン族達と共に、この町を、国を……守る事を決めた。
……だがその時、そんな俺達に近付く者があった。
突然、ケロ太が姿を変えた。
それはやはりと言うべきか、久方振りのカエルモードだった。
そうしてケロ太はゲロゲロとけたたましく鳴き始める。
その声に驚きダマレイさん、サチエ、アトラン族の者達、ジェリア、ナブスターさん、コルリス、魔物達……全員が向き直ってこちらを見た。
……そして、魔物達の大群も。
あれ程の数がいれば怖いものなど何も無いだろうはずの彼等魔物達が、何故だかその全てが動きを止めてこちらを一心に見つけていたのだ。
……それと同時に身体が不安定に揺れ、意識が遠のくのを感じた。
恐らく、この場にいる全員が。
だが意識はすぐにケロ太の鳴き声によって呼び戻される。
……この感覚には、割と多くの覚えがあった。
直後、〝ある声〟を聞いた。
そしてそれを、その声を発した者を、理解した時俺の中に希望が込み上げてきた……
そうだ。
俺達には〝あの人〟がついてるじゃないか。
〝どうやら、来て正解だったようだな〟
それは勿論。
守り神の二つ名を持つ怪鳥……おザキ様だ。
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