四十八話 誤算式マッチポンプ

簡単なあらすじ『銃刀法違反はいけません!』






「ちょ!ちょっと待ちなさいよ!」


「待ってください!その人に悪気はないはずなんです!」


「むうぅ!!」


門番に槍を突き付けられて今にも拘束されようとしている俺のため、ジェリアとコルリス、そして多分ルーも助け舟を出そうと試みる。


「心配するな……お前達にも来てもらうんだからな。そこでゆっくりと話を聞こうではないか」


しかし、門番は冷たくそう言い放った。

マズい。このままでは皆も捕まってしまう。


そう思い、俺は懇願した。


「連れて行くのは僕だけにしてください!大人しくついて行きますし、皆もすぐに帰らせますから!」


しかし、銃刀法違反(?)の容疑者の言葉など彼には無価値なのであろう。門番は全く耳を貸そうとはせず、俺は彼の持っていた縄で今度こそ拘束されてしまう。


すると、それを見たルーとプチ男が戦闘モードへと変わるのが雰囲気で分かった。


本当にマズい。八方塞がりだ。

このままでは門番と戦闘になってしまい、ひいてはアトラン族との全面戦争にもなりかねない……


かと言って彼等を止め、されるがまま移動すれば俺は恐らく……


「随分と騒がしいな。どうかしたのか?」


その時門番の背後から何者かが現れ、そこにいる者達へと向けてそう言った。


それを聞いた俺はガッツポーズをし、両の拳を高く、高く空へと掲げた。心の中だけで。


何故ならば、その声が聞き覚えのあるもの……

サチエのものだったからだ。







「おおクボタ!クボタじゃないか!久し振りだな!」


「サチエちゃ…………サチエ!ああ良かった!実はさ……」


サチエは門の前で騒がしくしていた者達の中から俺を発見すると、すぐにニコリと笑ってそう言った後、俺の言葉を遮っていきなりアトラン族式の挨拶をかましてきた。


すると、それを見たコルリスは珍しくややキツい表情をしてサチエを睨み、ジェリアは「あっ……じゃあこの人が……」と呟いてからほっ、と一つため息を吐いた。


コルリスがしている表情の意味はよく分からないが、ジェリアの方は俺と同じく、この状況が好転しそうな〝匂い〟を感じ取り、安堵したのだろう。


「あ……ゴホン。だが、何故こんな所で騒いでいたんだ?サワコ、教えてくれないか?」


サチエはその後すぐにはっとしたような顔をしてからハグをやめ、俺達と門番を見回しながら言う。


多分、警備の任につく事もあると言っていたサチエは門番もやる時があるのだろう。


それで、いつもの癖でついつい抱き付いてしまった……が、今はそうすべきタイミングではないと気が付いたのだと思われる。


「その男が魔物使いであるにも関わらず武器を持っていたのでな、今から〝刃獄〟に連れて行く所だったのだが……その様子だと、このまま通してしまっても問題はなさそうだな」


門番……もといサワコなる人物は『ほっとした』のと『呆れた』のが混ざり合ったような表情でそう言った。


というか、名前から予想するにこの人は女性だったらし……いやサチエもあの名前で男だし、違うか?……ああもう、アトラン族はよく分からん。


「ふむ、そうか!クボタは〝あの〟武器をちゃんと身に付けているのだな!それは感心……なるほど、つまりこの騒ぎは私のせいでもあるのだな……皆、すまなかったな」


そう言いながらみるみる顔を青くし、サチエは謝罪した。


ジェリア、コルリスは彼がそうした意味をはかりかねている様子であったが、サワコは何となく理解してくれたようであり、ここで俺達はようやく町への訪問を許可してもらう事が出来たのだった。


ちなみに、その後コルリスとジェリアには「心配したんですよ!全く!」、「ヒヤヒヤさせないでよね、本当に……」等々、あーだこーだと言われ、まあ気持ちは分かるので言い返す事も出来ない俺のハートはズタボロになった。


もう一つちなみに言っておくと、サワコの言っていた『刃獄』というのは何と……町の近くにある、ウセモノハモノが大量に生息している洞窟の事だったんだそうだ。


なるほど、口を割らない者はそこに放り込まれてミンチになるんだろうな。


サチエが来てくれて、本当に良かった……

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