十三話 次期頭首様の……秘密?
簡単なあらすじ『サチエ、プチ男、クボタさんはアンデッドに襲われましたが、プチ男君のお陰で何とかなりました。』
アンデッドがようやくただの骨に変わったのを見届け終えた俺は、ぶっ飛んでいったプチ男を回収し、サチエの元へと戻った。
サチエは地に片膝をつき、肩で息をしていた。彼女はアンデッドからの攻撃を躱し続けていたのだ。こうなるのも仕方ない。
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「ああ、問題ない。服が少し破れただけだ」
俺が問いかけると彼女は呼吸を整え、そう答えてくれた。
良かった。人魂みたいなものが一度被弾したのを見て心配していたが、どうやら無傷だったようだ。
「助かったよ。客人を守らなければと飛び出したは良いものの、武器を持っていなかった事をすっかり忘れていたからな」
そういって彼女は少し恥ずかしそうに笑った。
この人は考えるよりも先に身体が動いてしまうタイプの人なのかもしれない。
まあそれは俺達を助けようとしての行動なのだ。俺は『こちらこそ助かった』という旨と礼を彼女に告げ、サチエが動けるようになったら停留所に戻る事を伝えた。
すると彼女は突然、こんな事を言い出した。
「私も付いて行って良いかな?礼がしたい」
「え、でも儀式……でしたっけ?あれは良いんですか?」
「構わないさ。例え君が来なくとも、私の任は手薄となった町の警備だったろうからな。〝アレ〟にはまだ、いてもいなくても変わりない存在なのさ」
「じゃあその警備の方は……?」
「なに、若い衆がやっているから大丈夫だ。君はひょっとすると……私が同行するのは嫌か?」
「あ!いえ、そう言うワケじゃないんですよ!」
こうして、俺達はサチエと共に街へと戻る事となった。
彼女に手を引かれ、丘を後にする俺達。その背後では魔王城の生垣から二人と一匹を見つめる眼差しがこちらへと向けられていたが、この時の俺達にはそれを知る由もなかった。
街へと着いた途端、サチエは今までのお堅いイメージが完全に崩れ去る程のはしゃぎぶりであれこれと興味を示しては駆け回り、俺達を振り回した。
サチエの年齢は多分、コルリスより上か同じくらいなはず。そこから推察するに、恐らくではあるがこれこそ素の彼女なのだと思われる。
ザキ地方での振る舞いは次期頭首として、アトラン族代表としてのものだったのだろう。どうやら未来のリーダーも色々と苦労しているらしい……というか、もしかするとこの子は息抜きのために付いてきたかっただけなのかもしれない。
「見てくれクボタ、あんな所に可愛らしい魔鳥類の魔物がいるぞ!ザキ地方にも来て欲しいが無理だろうな、あんな荒れ果てた地ではな!ワハハ!」
「あ、アハハ……どうだろね」
そんな彼女は今、反応に困る自虐ネタを披露している。
一応言っておくと、俺とサチエは定期便に乗っている最中、彼女がいつまでも客人呼びは失礼だと言い出したのがきっかけで改めての自己紹介を済ませている。だからサチエは俺をクボタ呼びで、俺も彼女に対してタメ口なのである。
「どうしたクボタ?それにプチ男も、何だか疲れているように見えるぞ?」
サチエはこちらを振り返り、ここにきて初めて俺達を心配してくれた。
「まあ、ちょっと疲れたかも」
俺は彼女を追いかけていたせいで、プチ男はザキ地方から街までの移動中ずっとサチエにこねくり回されていたせいで実際とても疲れていたのだ。もしかするとそれが顔に出ていたのかもしれない。
「そうなのか、もっと早く言えば良かったのに………………」
すると、突然彼女はそこで黙り込んでしまった。
「どうしたの?」
「なあクボタ。もしかして君らが疲れているのって……私が、私がはしゃぎ過ぎていたせいか?」
「え!?いやそれはぁ……」
サチエにそう言われ、俺は変な声が出てしまった。何故ならそれは図星だったからだ。
「……やはりか。その、あの、申し訳ない。街に来るのは久しぶりでな、つい……」
それで察した彼女の頬はみるみるうちに赤く染まってゆく。どうやらたった今自分のキャラが崩壊してしまっていた事に気が付いたようだ。
「……この子思ってたのよりカワイイなぁ」
「何!?」
「いや、何でもない」
ついつい心の声が漏れてしまった俺はひとまず話題を逸らすために、彼女を俺の行きつけのお店……またの名を集会所兼酒場へと誘った。
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