第18話 火山竜アタタカ 2
ピリピリと張りつめた空気が流れる。互いに互いを ”敵” と認め、距離を測る。
先に動いたのは火山竜アタタカ。
彼はその巨大なアギトをカパリと開くと、灼熱の体内で熱された必殺のブレスを吐き出した。
相手が ”餌” だろうが ”敵” だろうが関係ない……アタタカがやることは変わらない。
この灼熱のブレスを吐き出せば、どんな巨大な相手でも、どんな強靭な相手でも何の抵抗もできずに死んでいく。
溶岩の温度に適応できる生物などいないのだから……。
故に火山竜アタタカは特別(二つ名持ち)なのだ。
自分以外は熱に適合できない弱者で、自分に喰われるために存在する ”餌”。
そうやって、アタタカは孤高の王として生きてきた。
しかし、マーヤ(今回の敵)は今まで出会った脆弱な生物たちとは違っていた。
彼女は、アタタカがブレスを吐き出さんと口を開いた瞬間、全力で彼に向けて走り出す。
トップギアで一気に距離を詰めたマーヤ。サイドステップでアタタカの背後に回り込んで灼熱のブレスを回避。
勢いをそのままに、くるんと体を反転させるとバトルアックスを右上段から体重を乗せた一撃を、アタタカの後ろ足に打ち込む。
魔王にすらダメージを与えたマーヤの一撃。
火山竜アタタカが大きく前のめりによろける。
いらだったように尻尾で背後を薙ぎ払うが、すでにその場所にマーヤはいなかった。
攻撃後、すぐに距離を取ったマーヤ。
彼女は、先ほどバトルアックスの一撃を与えた火山竜アタタカの後ろ足を睨みつける。
結果から言うと、彼女の一撃はアタタカの強靭かつしなやかな皮膚と耐熱・耐衝撃性脳の高い体毛により弾かれた。
体勢を崩したことから、全くダメージが通っていないわけではなさそうだ。バトルアックスを打ち込んだ衝撃は内部に届いている……。
チラリと自らの武器を見下ろす。
分厚い鉄の刃。粗雑なその武器は、お世辞にも切れ味が良いとは言えない。
火山竜アタタカは溶岩の熱に適合した地竜だという。
その過程で、彼は手に入れたのだろう。溶岩にも負けない、強靭な皮膚と体毛を……。
勇者カインの持っていた聖剣であれば、そんな強靭な皮膚もやすやすと切り裂けるかもしれない。
しかし、無いものねだりをしていても何も始まらない。
多少なりともダメージが通るのなら、勝てない道理なんてないのだから。
「切れないってんなら仕方ねえ……打撃で勝つだけさ。叩き潰してやんよアタタカ」
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