第17話 火山竜アタタカ
ドワーフの集落に悲鳴が響き渡る。
炭鉱に籠っていた炭鉱夫たちも悲鳴を聞きつけ、何事かと穴から出てくるがその理由を知ってぎょっと目を見開く。
火山竜アタタカ。
腹をすかせた二つ名持ちの地竜は、逃げ惑うドワーフたちに向かって灼熱のブレスを吐き出した。
普段溶岩の中で暮らすアタタカの体温は非常に高温で、彼の体内で温められた空気は、ただ吐き出すだけで周囲のものを焼き尽くす最強の攻撃となる。
逃げ遅れたドワーフの幾人かが灼熱のブレスにとらえられ、瞬時に丸焦げになって絶命する。
アタタカは悠々と仕留めた獲物に近寄ると、焼けすぎて少し炭化したドワーフの死体を大きな口で一飲みにした。
ドワーフ数人を平らげたアタタカ。
しかしまだ足りない。
アタタカが地上に出てくる回数は少ない。快適な溶岩だまりの中から這い出したアタタカは、大量の餌を平らげて巣に戻り、数か月かけてゆっくりと胃袋の中身を消化する。
故にアタタカは、逃げ惑うドワーフたちを、さらに捕食しようと歩みを進め掛け……その優れた聴覚で背後にいる存在に気が付き、足を止める。
「よぉ火山竜アタタカ。食事中にすまねえが……アタシとちょっと遊んでいきな」
ギラギラと鋭い目線でアタタカをにらみつけるマーヤ。
その手には身の丈ほどもある愛用のバトルアクスが握られている。
アタタカは野生の直感で悟る。
目の前にいる生物は、今までのようにただ捕食するだけの ”餌” ではなく……自分の生命すら脅かす ”敵” である……と。
溶岩の灼熱に適合したアタタカにとって、その脅威は同族の地竜にすら感じたことのないものであり……その長い生涯で初めてともいえる生命の危機であった。
アタタカの警戒を感じ取ったのか、マーヤはニヤリと不敵に笑い、バトルアックスの切っ先をアタタカに向けた。
「久しぶりの強敵だ……やろうか火山竜アタタカ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます