第14話 ドワーフの火酒 4
「ロッシー!そっちにも一匹いったぞ!」
「ええい!またか!何匹いるんだこの犬っころども!」
そう吐き捨てながら、ロッシーは自身の武器、ドワーフの手で鍛え上げられたウォーピック(戦闘用に改良されたツルハシ、その鋭い一撃は鉄の鎧に穴をあけるほど)を構える。
ドワーフの集落に向かう道中、二人は運悪くシルバーウルフの群れに遭遇してしまった。
シルバーウルフは群れで生活する銀色の毛並みを持つ大狼で、特定の縄張りを持たず、餌を求めて移動しながら生きている。
一匹の戦闘力はさほど高くない。
しかし、常に群れで生活する彼らのチームワークはすさまじく、格上の相手に物おじせずに襲い掛かる獰猛さも持ち合わせているやっかいな獣だ。
ロッシーは正面から飛びかかってきたシルバーウルフに向かって、ウォーピックを思い切り振り下ろす。
鍛冶職人であり、炭鉱夫でもあるロッシーの、固い岩盤をも穿つウォーピックの一撃。それはシルバーウルフの固い図解をやすやすと貫き、即座に絶命させた。
しかし休む暇はない。
彼の背後に回り込んでいた別の一匹が、獲物の喉笛を噛み切らんと牙を光らせて襲い来る。
正面の相手に攻撃した直後で体勢が崩れ、回避が間に合わない。
ロッシーが死を覚悟したその瞬間、体がぶれて見えるほどのスピードでシルバーウルフとロッシーの間に割り込んできたマーヤが、バトルアックスでシルバーウルフを両断する。
噴き出した血しぶきが二人を赤く染める。
口に入った返り血をマーヤは吐き出して、周囲をぐるりと見まわした。
死屍累々。
二人が倒したシルバーウルフの死骸があちこちに転がり、ムッとするような血の匂いが周辺に広がっている。
「早いとこ移動しないと、この匂いにつられた別の肉食獣がやってきちまう」
「そーだなロッシー。その通りだ……だがその前にちょっとやることがある」
そう言ってマーヤは懐からナイフを取り出すと、シルバーウルフの死骸のそばでしゃがみこんだ。
「……マーヤ、お前さん何をしてるんだ?」
ロッシーの問いに、マーヤはなんでもない事だとばかりに軽く返答する。
「解体だよ。シルバーウルフの味を確かめようと思ってな」
「……まさか、食うつもりか?」
「もちろん!バトルベアでさえ食えたんだ、シルバーウルフも食えないこたぁねえだろ」
マーヤはにやりと不敵に笑った。
「楽しみにしてなロッシー、うまい料理を作るからよ」
◇
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