喫茶店での電話
「……もしもし?」
「おう、どうした弥登。」
12月29日。世間はクリスマスを通り過ぎて正月を迎える準備をしている頃。弥登はとある喫茶店の隅にある席に座り、電話をしていた。相手は親父。
「用事の為電話したんだが、今は大丈夫か?」
「ワシは大丈夫じゃ。偉い立場にいる俺には多くの仕事は入ってこないからのう、まあ仕事が入ってきてもすぐに終わる仕事ばっかりじゃがな!」
そう言って豪快に笑う親父に苦笑するしかない。親父の役職は警察庁長官であり、外交等にも一役触れている仕事であり、責任が大きく感じる仕事のはずなのだが……楽な仕事と申すか、親父。
「まあいいや、問題ないと言うなら。正月はそっちに帰ればいいのか?」
「ワシはそれの方が嬉しいしそれでいいが……弥登はそれでいいのか?」
「え、何で?」
お父さんとお母さんが事故で居なくなり、親父達に拾われて会社を建てて親父の家を出て。以来ずっと正月は親父の家に帰っているけど……何かあったっけ?
なんの事か全く分からない弥登に親父は言う。
「彼女の春川さんと一緒に帰ってくるのか?」
「何勘違いしてんだジジイ?」
いきなりのトンデモ発言に口が悪くなる弥登。慌てて智成が喋る。
「その子はバイトとして雇ったんじゃろ?バイトの人は忘年会に呼ばないと思うんじゃ、ワシ。しかも普段は仕事ばっかの弥登じゃろ?そこに女子が来たら勘違いしてもおかしくないじゃろ。」
「………そうだな。」
確かに自分が普通とは違う行動をしている事はよく理解している。しかしそれだけだ。
「親父がさっきも言ったけど詩音はバイトとして雇っただけ。忘年会の時も詩音が偶々中心にたってしまっただけ。偶然ですよ。」
親父は理解してくれたようだ。『普通は下の名前で呼ぶのかのぅ?』……理解してるよね。
「とにかく、正月は親父の実家に帰るから。わかった?じゃね。」
「ん、ああ、了解じ」
途中で電話を切り、貰ったコーヒーを飲む。
「ぶふっ!」
苦かった。
・・・
「ジジイって言われた……ジジイって……」
「官庁、ちゃんとしてください。この後会議が控えてるんですから、しっかりしてください。」
警察庁では息子にジジイと言われ、泣いている1人のおじいさんがおったとさ。
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