黒を溶かした深藍色

 さて、戻ってきたわけだけど、どうやら【コノフォーロ】はまだきてないみたい。でも彼らもいないみたいだし……。


「……いない?なんで?【コノフォーロ】を待ってろって行ったわよね。ボレアス?……通信範囲内にいない……。逃げた?ボレアスを捕獲して?……エウロス、そのまま周辺宙域の捜索をお願い。」


『了解した。』


 先行させてから、ずっと展開させたままのエウロスとそのペタルたちをさらに捜索に繰り出す。


「……非戦闘員の所へはアタシが行くわ。……いなくなってたらアウトよね。」


 基地内に入ると、どうやら特にいなくなったりはしていないようだ。パワードスーツは無くなっているので、周辺域に出たのだろう。


「はぁ、一安心……ちょっと、アンタたち。あの男たちはどこへ行ったかわかる?」


「?……いや、なにか迎えに行くって言ってたから、貴方のことかと思ってたわ。」


「……いや、【コノフォーロ】を迎えに行ったのかな?……そうか、通信しないと。」


 一度基地の外に出て、通信を始める。緊急連絡回線のようなものなので【コノフォーロ】からはすぐに応答がある。


「はーい、こちら【コノフォーロ】〜!ルリィですよ!」


 金髪のアホヅラが画面いっぱいに現れる。


「ちょっとルリィ。巨人のおっさんたちから連絡あった?」


「お!ネモちゃん!ありましたよぉ、衛星のどこにあるかわかりにくいから迎えにきてくれるって!」


 画面のアホヅラが可愛く考える顔に変化したかと思うと、ぱっと明るく返答してくれる。そう言うことであれば、一応は安心だ。しかし、急にヴィルのやつが通信に割り込んでくる。


「ネモ!お前の周辺宙域から【アブゾーヴ】の反応がある!接近されてるぞ!」


 なんで反応がわかるのか、とか、そう言う疑問より先に周辺からおそらく近辺の戦艦や【マシンズ】の残骸がゾンビのように迫り来るのが、レーダーに映し出され即座に通信を繋ぐ。


「エウロス!」


『どうした。』


「アンタ、どこまで接近した!?」


 言いながら、機体をすぐに宙に浮かせ、基地から離れる。これ以上近くにいるのはまずい。とはいえ、基地は守らないとダメだ。巨人たちの避難民が取り込まれてしまう。


『対象の指定を頼む。』


「目的の惑星によ!それか、気になることはなかった!?」


「接近は撮影のできる最低限度だ。疑問点としては、デブリが多かったこと、No.3がデブリに衝突したが、撃破したぐらいか。しかし、損傷は無かったため、報告の必要性はないと判断した。」


「ばか!判断はこっちでするわよ!……No.3か。」


『すまない。思考を修正する。』


 謝るエウロス。クロス・ペタルたちには、さらにそのAIが操作可能な直轄のスライス・ペタルが4機ずつ存在している。おそらく、そのうちの1機に【アブゾーヴ】が取り憑いたと考える。即座にNo.3への電力供給を断ち、自爆命令を下す。


「まぁ、意味ないだろうけど。……ゼピュロス!ビーム刃展開!ここを守ってて!」


『いいだろう。』


 ゼピュロスを守りにおいていき、迎撃に向かう。数は戦艦の残骸……ほとんどエンジンと装甲くらいしか残ってないようなのが二隻。なんの【マシンズ】だったかわからないようなのが5体ほど。


「ノトス。【アイオロス】周囲に展開。接近して叩くわよ。」


『はぁい。』


「俺たちも10分後くらいに到着する。あまり無理はするなよ。」


 ヴィルがそう言うけど、これはアタシのミスだから取り返しておかないとね。一瞥だけして通信を切る。


「一回負けてる奴らに、アタシたちの【アイオロス・アネモイ】が負けるわけないわよ。」


 接近する反応で数はわかるが、どんな武装があるかわからない、ひとまずはペタルを……。


「いや、二の舞になるだけね。ペタルたちは便利で強いけど、【アブゾーヴ】たちにはただの餌か。」


 しかも、一度壊れた【マシンズ】に取り憑いているのなら、エンジン爆破で焼き尽くすこともできない。とりあえずは常備してあるショットガンで対応するしかないわね。


「ヴィルのやつは殴られたって言ってたし、吸収出来る出来ないの違いがあるのかしら。」


 言っている間に会敵。ひとまずはショットガンで武装を狙う。マシンガンや、折れたブレードなどを振りかざすが、運動性能が違うわ。


「モノの数じゃないわ。この程度ならとりあえず捌いて……。ぐっ!?」


 やはりやつらはつながりあっているのだろう、ありえないタイミングでの背後からの攻撃。味方の後ろからの射撃攻撃。様々な予想外の攻撃が【アイオロス】を襲う。


「……あそこに向かうしかないか。」


 ……さっき放置したシャトルには燃料が積まれてるはずだからそこまで誘導すれば……。場所としては数分の距離……こいつらを惹きつけて寄せないと。


「ほら!追いかけてきなさい!」


 攻撃は仕掛けつつ、距離を離していく。そうすると奴らは馬鹿正直に着いてくる。いいわ、そう、その調子よ。


「……でも、後ろの戦艦まで巻き込めるかしらね。」


 後ろの戦艦からは、どうやら攻撃は飛んできてないが、じわじわと接近してきているようだ。ぶつけにくるつもりか。


「あれにぶつかったら多分命はないわね……。」


 とはいえ、作戦自体はうまく言ってるわ。これならもうすぐ……。


「……シャトルが動いてる。」


 作戦は続行でいいけど、難易度がすごく上がったわねこれ。

 ペタルたちなしで敵と敵が合流するように誘導する、か。


「ちぃっ!……こなくそ!」


 複数戦が得意なんてのは、全機能がまともに機能したらの話よ!肩部のバルカンをばら撒きながら距離をとっていく。

 シャトルの位置と敵機5体はうまく合流できた……。これなら……戦艦が後ろ!?衝撃が身体中を包むだろう。


「ヤバい!取り込まれ」


 その瞬間、さらに大きな衝撃が身体を襲い、機体が急激に戦艦から離れていく。しかも、その戦艦は何か巨大なビーム円盤にて真っ二つに。


「……おっと、余計なお世話だったかな。」


 ヴィルのうざったらしい声が接触通信で聞こえる。【アイオロス】を襲った衝撃は【ブルー】のワイヤーアンカーだったのだ。じゃあさっきの攻撃は。


「ご無事ですか……ネモさん。」


 あれは【シーク・ナイト】……礫ちゃんね。


「……はぁ……助かったわよ。」


 助けてもらったのは事実なので礼は言うけど、とりあえずあとでヴィルは殴る。

 【ブルー】【シーク・ナイト】【アイオロス・アネモイ】が並び立つ。


「ま、とりあえず……反撃開始だな。」

 

 

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