第4話
応援とレビューいつもありがとうございます。
カクヨムで投稿した新作の中では1番伸びてビックリしております。
引き続き更新してまいりますので、よろしくお願いします。
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どうやら転生しても【
恐らく魔法技術の中にも、アドレスやコードのようなものがあるのだろう。それが引き継がれることによって、今俺は魔法を使えている。
賢者の記憶を思い出したからと言って、何の魔法訓練も受けていない肉体が魔法を使えるのはおかしい。ゲーム本体はあっても、メモリーを引き継がなければ同じ状態に戻せないソーシャルゲームのようなものだ。
そのコードのようなものですら、スキル『おもいだす』は思い出し、脳にコードごと刻んで、魔法を使えるようになっているのだろう。
【
スキル『おもいだす』……。
意外と奥が深い魔法なのかもしれない。
「火蜥蜴の革手袋に、ムーンラビットの皮で作ったブーツ。蛟鱗のベルト、
俺は昔の装備を試着するが、途端膝を突いた。よく考えたら、
昔なら、ほぼ無尽蔵に魔力があったから問題なかったのだが、今の俺はまだまだもやし体型。さすがに賢者時代の装備はまずいか。
【
一先ず火躱しの衣だけにしておこう。これ1着なら問題なさそうだ。
「た…………て…………」
ん? 今、何か声が聞こえなかったか? まさか【
気のせいかと思いながら、生存者を探す。ティフディリア騎士団なら助ける必要はないのだが、これだけの広範囲だ。民間人も巻き込まれた可能性はある。一応確認することにした――のだが……。
「まさか……。あんただったとはな」
俺は生存者を見つけて、目を細めた。
燃えるような赤毛に、薄緑色の瞳。鎧を着ながら、今気付いたが唇には赤いルージュが引かれていた。
隕石の下敷きになっていたのは、ブリエンヌ・ヤ・ティフディリアだった。
「運がいいのか、悪いのか?」
この場合は、悪運が良いとでもいうのか、やれやれ……。
「ちょ! そ、そこのあなた! 何をボーッと突っ立ってるのよ。早くあたくしを助けなさい」
今、かの姫騎士とは5、6メートルほどの距離にある。ただブリエンヌはまだ俺が『ゴミ勇者』だとは気付いてないようだ。
すでに俺のことは忘却の彼方へと追いやったのか。それとも忍び寄る死の気配によって、目が見えなくなったのかわからない。可能性として後者だろう。
「聞いてるの、あなた!! そこにいるのわかっているの! さっきから霧が濃くてよく見えないけど、わかってるのよ! 早く! 早く助けて! 痛いの! 痛いのよぉおぉぉぉおお」
ついに泣き叫ぶ。
弱ったなあ。目の前で女が泣き叫んでいるのに、何の同情も浮かばない。
これは俺が賢者の記憶を取り戻したからではない。
むしろ賢者時代なら助けていただろう。
だが、今の俺は1000年前とは少し違う。
この女のしたことは考えれば、賢者の記憶を思い出した今でも同情の余地はなかった。
こうやって助けを懇願されても、薄く冷たい殺意が胸の中で研がれていく。
「なんで? なんで? 動かないの? わ、わかったよ。ほ、褒美がほしいんでしょ。あたくしを助けてくれたら、パパにお願いしてあなたがほしいものを何でもあげるから! お願い! もう……」
「自業自得だな」
声をかけるつもりはなかったのだが、結局かけてしまった。
本音を言うと、2度とかかわりたくなかったのだが……。
口を突いたものは仕方ない。
この際だから、言いたいことは言っておこう。
「その声……。もしかして、あのゴミ勇者??」
「ゴミねぇ……」
「ゴミにゴミって言って何が悪いのよ。あんたが来て、散々だわ。戦場になんて来るんじゃなかった」
やっぱり声をかけるんじゃなかった。少しでも態度を改めるかと思った俺が馬鹿だった。これでは賢者失格だな。
ここにいても、不愉快な思いをするだけだ。やはり離れよう。
「ちょ! まままま待って! どこ行くのよ! あたくしを助けなさいよ!!」
どの口が言うんだろうか、こいつ。
「いーい。あたくしを助けたら、あなた、今度こそ英雄よ! 一国の姫君を助けたんだから! もう誰もゴミ勇者なんて言わないし、あたくしが言わせないわ」
「言ってる張本人が言っても信用ないな。そもそもお前、俺の名前すら覚えてないだろう」
「はあ?? 覚えてるわけないでしょ。勇者は勇者じゃない!」
やっぱダメだ、こいつ。
死ななきゃ治らん、屑だ。
いや、死んでも治るとは思えない。
俺は先ほど拝借した剣を取り出す。ブリエンヌの前で大きく振り上げた。
「ギャアアアアアア!! やめなさい! 殺さないで! お願い許して! 謝るから。ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさいいいいい!!」
「もう遅い!」
剣閃が閃く。身体は整っていないが培った技術自体は消えていない。といっても、こちらも全盛期に遠く及ばないがな。
「いぎゃああああああああ!!」
およそ皇女とは思えぬ下品な声がこだまする。
はらりと落ちたのは、ブリエンヌの首ではなく、その真っ赤な髪だった。その毛をブリエンヌに見えるように掲げる。
「いや! いやああああ!! あたくしのぉお! あたくしの綺麗な髪が! 女神パルティナよりも美しいって、みんなが褒めてくれたのに!」
髪を切られただけでこの反応とはな。
命を奪われなくて良かったとは思わないのだろうか。
「なんてことするのよ! 許さない……。あたくしは絶対あなたを許さないわ」
「へぇ……。許さないなら、俺にどんな罰を与えるんだ」
「うるさい! その口を塞いで、とっととあたくしを助けなさい! そして殺してやるわ、ゴミ勇者!!」
言ってることが無茶苦茶だ。これが一国の皇女とはな。1000年前も変わった奴はいたが、ブリエンヌほど厚かましい人間はいなかった。
「心配するなよ。俺はお前を殺さない」
「なんですって……」
「だが、お前を助ける義理もない」
「はあ……? じゃあ、あなた……。あたくしに何をしてくれるの」
「何もしない」
「は?」
「助けるのも……。殺すのも……。あんたにとって施しだ。もう、俺はあんたに与えることはしない。だから、何もしない」
俺は立ち上がり、ブリエンヌに背を向ける。
「ちょっと! 待ちなさいよ!!」
「喚くなよ。魔獣や野生動物に聞かれてもいいのか。ここには死臭が渦巻いている。人間の肉も、魔獣の肉もある。よく育った皇女の柔らかいお肉とかな」
「ヒッ!」
「あんたはきっと誰かから施されることで生かされてきた。それが当然だと思っているだろう。……だったら、最後ぐらい誰かに施してやれ。それが魔獣の腹を満たすことになることだとしても、善行に違いないだろう」
「魔獣……。腹……。いや! いや!! いやよ! 絶対にいや! お願い!! 助けて!! なんでもするわ! ゴミ勇者なんて言わない! ねぇ!! 勇者様!! かっこいい勇者様! お願い! 振り返って! あたくしをあたくしをたすけてぇぇぇえええええええ!!」
ブリエンヌの声が響く。
皇女の声はどこからか響いた魔狼の遠吠えと重なった。
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明日、2回投稿する予定です。
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