第178話 思い出のお店について語ろう
東京に住んでいた頃、帰宅経路にお弁当屋さんがありました。
チェーン店ではなく、御夫婦?が経営していらしたお店でした。
メニューに、『唐揚げ弁当』『アジフライ弁当』があったのを覚えています。
揚げ物系のおかずが多かったかな?
西武池袋線の椎名町駅で下車し、歩いて一分程度。
お店が開いている時は、そこでお弁当を買って帰宅していました。
当時で、四百円前後だったと思います。
チェーン店の味とは、どこか違う。
どう違うのか説明できないけれど、そのお店の味が好きでした。
材料が切れると『売り切れ』のPOPが出され、『唐揚げ弁当』がセーフで買える時が多かったかも。
そこのお店が閉まっている時は、アパートから徒歩一分のコンビニに入りました。
ここも大手チェーンでは無く、個人経営のお店のようでした。
でも品揃えは大手と変わらず、何かと重宝していました。
しかし、私が東京を去る頃には、どちらのお店も無くなっていました。
コンビニは大手チェーンに変わり、駅前に在った本屋さんも姿を消し、跡地には小さなビルが建って、ファストフード店が入りました。
当時、地主と周辺の本屋さんが揉めていたようです。
大手書店が駅前に入り、小さな書店は追い込まれ、閉店を余儀なくされたのでしょう。
書店には、地主に対する抗議ビラが貼られていました。
『●●●は、嘘つきだ!』と書かれていたと記憶しています。
後に東京に遊びに行った時には、その大手書店も二階に入っていたレンタルビデオ店も消えていました。
今は、駅近くにあった高齢の御夫婦の燃料販売店も、その隣の薬局も消えたでしょうか。
古書店、お惣菜屋さん、八百屋さん、カーペット屋さん……
短いアーケードに並んでいたお店が懐かしいです。
大雨の時、カーペット屋さんが浸水して被害が出たと聞いたことがありました。
手芸屋さん、靴屋さん、お肉屋さんもありました。
人が行き交う道路にネズミが座っていて、その背を野良猫が前足でツンツンする姿も見ました。
江古田駅近くには小さなバーガーショップがあり、ハンバーガーとカレー風味のポテトフライが、それぞれ百円で買えました。
グーグルアースで、今の画像を見ることを出来るでしょう。
しかし、そうしたいとは思いません。
思い出を上書きしたくないからです。
あの場所は、いつまでも心に留めておきたい。
それを保存しておくために、これを記しました。
書店の御主人が貼った抗議ビラのことなど、私が書いて置かなければ忘れられてしまいます。
このエッセイだって、束の間の夢のようなもの。
けれど、椎名町駅の小さな書店が、必死に生き残ろうとした記憶を少しでも長く止め置きたい。
日記やエッセイは、失われゆく『記録と記憶』の図書館でもあるのですね。
最後に、昨夜の夢の話を書きます。
私は、研究室のような場所にいます。
どうやら、仲間とタイムスリップして来たようです。
私は白衣を脱いで外に出ました。
そこは渋谷駅のようです。
でも、駅ビルの看板の駅名は違います。
読めない漢字です。
駅の外壁は青や赤のタイル貼りで、駅からは続々と人が出て来ます。
その前には、不時着した飛行機が横たわっています。
私はまた研究室に戻ると、研究員たちが実験をしていました。
研究員たちの姿は『地獄のミサワ』氏が書くキャラに似ていました。
ただし、頭が小さめ。
そこで目が覚めました。
以上です。
終わり。
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