第22話 三色アイスの思い出

 今回は、アイスにまつわる思い出を二つばかり書きます。


 

 東京暮らしの頃。

 帰省のために羽田空港に向かう途中のことです。

 あまりの暑さに、喉がカラカラ。

 今から考えたら、熱中症の一歩手前だったのでしょう。

 重いキャリーケースを引き摺りつつ、ぼんやりした頭で空港内を歩いていました。

 自販機で飲物を買えば良かったのですが、もう少しで待合室に着くので、それまで我慢と決め込んでいました。

 

 そして待合室に到着すると、笑顔の女性たちが通行人に何かを配っています。

 何を配っているのか考える隙も無く、傍を通り過ぎようとすると……

 女性が何かを渡してくれました。


 それは……アイスバー!!

 何と、某高級アイスバーを配っていたのです!

 手にした瞬間、驚愕!

 これ、高いやつじゃん!

 いいの???


 重い体を引き摺りつつ椅子に辿り着き、開封するとフルーツアイスバー!

 迷わず、かぶりつきました。

 カチンコチンに冷えていて、激ウマ、劇ウマ!

 この世に、神が存在したと思えた瞬間でした。

 食べ終わると、体と頭は復活!

 メーカーさまが、試供品として配っていたのでしょうが太っ腹です!

 このアイスバーのお陰で生きています。

 今も、このメーカーさんのアイスにはお世話になっています。

 



 そして、もう一つ。

 確か、祖母が入院していた頃です。

 私は小学校入学前でしょう。

 

 その病院に、とても素敵なお姉さんが入院していらっしゃいました。

 髪は肩より長く、年齢は二十歳を越えていたかも知れません。

 そのお姉さんと、三色アイスを食べた記憶があります。

 病室だったか待合室だったか分かりません。

 けれど、二回ほど向き合って食べたことを鮮明に覚えています。

 

 私はそのアイスを『団子アイス』と呼んでいました。

 三色のアイスバーだったのは覚えていますが、三色アイスで検索すると『トリノ』がヒットするぐらい。

 お姉さんと食べたアイスが、『トリノ』だったかは分からないままです。


 けれど最近、『トリノ』をスーパーやドラッグストアで見かけます。

 安いし、ついつい買ってしまいます。

 食べると、懐かしい優しい味です。

 お姉さんと食べたアイスも、このような味だったのでしょう。


 入院していたお姉さんは、今もお元気でしょうか。

 財布に優しい郷愁の味は、優しいお姉さんとの思い出の味がします。

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