第13話 忘れがたい小説中の食事シーン 四選
『食事シーンが秀逸な小説にハズレなし』が私の持論であります。
記憶に残る食事シーンのある小説をあげますと――まずは、小学生の頃に読んだ『ジェーン・エア』。
小学生向けに抄訳したものだと思います。
あくまでも私の記憶によるシーンなので、実際とは違うかも知れませんが。
孤児で、寄宿学校に引き取られたジェーン。
最初の夜の食事は『
この『
今こでそ『
そして、翌日の朝食には『お粥』が出てきます。
ですので、前夜のは『オートミール粥』ではなく、そのまま食べたのかも知れません。
その『オートミール粥』は焦げ付いていて、大半の生徒たちは食べるのを諦めたのですが、優しい先生が『チーズ付きのパン』を出すことを提案してくれて、生徒たちは喜んで食べます。
後のエピソードで、ジェーンと友人は先生の部屋に招かれ、先生の分のトーストと、先生が隠し持っていたロールケーキをいただくのです。
中学生の頃には映画版も観たのですが、罰を受けたジェーンが、椅子の上に長い間立たされていた描写が印象に残っています。
二つめが、これも小学生の頃に読んだ『怪盗ルパン』の1エピソート。
カフェに立ち寄ったルパンは、近くのテーブルに着いた美女に目を止めます。
白い綺麗な歯で豪快にトーストを食べ、チョコレートを二枚も平らげた美女に呆れつつも、話し掛けます。
実は彼女は怪盗団のボスで、変装していたルパンの正体をも見破っていました。。
しかし何者かに殺害され、ルパンにメッセージを遺して息絶えます。
ルパンは、「彼女のメッセージを無視するは恥」と彼女の死の謎を追います。
この女首領の食事シーンが、なぜか頭から離れません。
三つめが、マルグリット・デュラスの『モデラート・カンタービレ』。
高校生の頃に本を古書店で購入しましたが、後の引っ越しで捨ててしまい、後悔。
今も、中古でしか買えないみたいです。
主人公のセレブな主婦アンヌの自宅での晩餐会のシーン。
鴨のオレンジソース添えに……デザートにモカのアイスクリームが出たのを覚えています。
あるカップルの心中事件を目撃し、心の虚無に苛まれているアンヌは、料理の皿を断ります。
アイスクリームも、『彼女は口にするだろう』と未来形で書かれていました。
晩餐会でフルコースの皿を断るのは、マナー違反だと知らされたシーンです。
今も、コーヒーアイスクリームを目にすると、このシーンを思い出します。
四つめが、クレティアン・ド・トロワの『ペルスヴァル・または聖杯の物語』。
騎士になるために家を出た少年ペルスヴァルは、ある天幕を発見します。
天幕には乙女がひとり居るだけで、母の言葉「御婦人には親切にするのですよ」を自己流に解釈したぺルスヴァルは、出来立ての鹿肉のパイとワインを飲み食いし、乙女に無理やりキスをして天幕を離れます。
やがて天幕を留守にしていた乙女の恋人の騎士が戻ってきました。
田舎者の少年が乙女にキスをしたことを知ると、「ふん、喜んでキスさせたな!」と思い込み、乙女は着替えもさせて貰えずに旅を続けさせられます。
騎士となり、心を入れ替えたペルスヴァルは、後にこのカップルを発見。
擦り切れたドレスを着た乙女の姿に怒るペルスヴァル(お前のせいだろ)。
騎士に決闘を申し込み、打ち負かし、乙女を大切にするように説き、その場を離れます。
(現代から見たら)突っ込み所満載の主人公の行動とパイとワインが結び付いた、忘れがたいシーンです。
この後のエピソード『漁夫王の城』での食事シーンがまた良し。
侍従たちがテーブルを組み立て、真っ白いテーブルクロスを掛けます。
焼いたパンに炙った鹿肉をカットして載せ、珍しいシロップや飲み物、何種類もの練り薬(デザートに食べる習慣があったらしい)が並べられ、ペルスヴァルは漁夫王と深夜まで話し合います。
この食事がすごく美味しそうで、当時の貴族の食卓の資料としても楽しめます。
この四つの食事シーン、折に付けて思い出しちゃいます。
カクヨムの小説でも、食事シーンがあると楽しんで読んでおります。
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