第85話 カクヨムのお祭り
「カクヨムコンテスト10」が終わった。
今年も参加してお祭りを楽しんだ。「長編で挑戦し落選」と駄洒落にもならないボツ結果となった。初参加した昨年は皆さんに投稿の仕方などを教えて貰いながら、エッセイ部門で投稿した四編のうち三編が途中審査通過となれた。審査に通った人達と通過報告で喜び合う幸せは、自分は参加するだけで十分と思っていただけに、何とも言えない嬉しい経験だった。
今年は通過した方達にお祝いを述べるだけだが、自分の推していた作品がみな通ったので嬉しかった。自分の作品「噺家ごっこ」のPVは二千にも届かず、予想通り落語に馴染みが無い人には関心を持ってもらえなかったようだ。けれど、思いがけずこれをきっかけに落語に興味が持てたと言ってもらえたのは嬉しかった。
この物語は今から二十五年ほど前に、ひょんなきっかけから落研(落語研究会)出身の夫が、師匠として迎えられて出来た町内の落語研究会で、皆で噺家を気取って楽しく遊んだ実話で成る思い出話である。
会員達の芸名は自分の職業から付けたもので、例えば写真屋のNさんは「写真家げん蔵」で旋盤工のTさんは「
その第三話のコメントでカク友の「かごのぼっち」さんが洒落て、ご自身で「
今回応募するにあたり、もともと二年以上前に更新していたものを、既定の十万字超にする為に書き足したり、落語に親しんでもらう為に噺のちょっとした説明や小噺や、落語の極小粒程度の豆知識的なものを加えてみたりした。小噺の紹介を書きながら落語初心者である仲間達が、ちょっとした小噺でも話すのに苦労していた姿を思い出してとても懐かしかった。
何年かぶりでしっかり読んでいくうちに、沢山のエピソードの一つ一つに思い出が蘇る。あの頃の私は四十代の後半で、人生で一番充実していた時代だったように思われる。子育ても卒業し時間を持て余していた私にとって、仲間達と遊んだ落研がどれほど有意義なものになるかなんて、その時には全く予想もできないことだったのにと、推敲しながら感慨にふけっていた。
ページをめくる度に楽しくて可笑しくて、皆で大笑いしていたシーンばかりが思い出される。けれど当時の世の中はちょうどバブルがはじけた頃で、自営だった我が家も仲間達の多くも中々大変な思いの頃だった。けれど落研で集まればそこはまるでオアシスのようだと誰もが言い、皆にはそこが安らぎと英気を養う場所となれたことが沢山書かれてある。
初めは練習で皆の前に座るだけでも照れていたのが少しずつ話せるようになり、町内でも存在が知られるようになると地元のケーブルテレビで紹介され、すると今度は民放のテレビや新聞でも紹介されたりするようになった。初めて書いた小説らしきもの「噺家ごっこ」は、我らのそんな歴史(オーバーかな)を拙いながらも、記録として残すものにもなれたようだった。
演じることのない私は実際にあったことや皆の様子を、「噺家ごっこ」で面白おかしく書き、それを粗末ではあるがお手製の本のようなものに仕上げて、仲間達に強制的に受け取ってもらった。下手なものを読まされた上に、自分達の失敗の暴露やおちょくられる場面に、きっと迷惑千万なことだったに違いない。
そんな内輪の話「噺家ごっこ改稿版」を、カク友の皆さんから沢山読んでもらってとても感謝している私である。多くの作品が投稿され始めると、私のものとは桁違いのPV数や何千もの★を獲得している作品が次々と紹介され、その度に気後れしそうになったがそんな時に、カク友さん達から届けられる💛やコメントの数々にとても励まされた。
期間中フォローする作家さんが多い方は、沢山の作品を読みコメントを書くことで大変だったと思う。そんな大変な最中にも拘らず送られてくるそれらの💛やコメントは、まるでフルマラソンを走る自分に、沿道からかけられる大きな声援のように思えることがしばしばだった。
そして四十数話の物語を読み切ってもらった時には、四十二キロのマラソンコースを一緒にゴールインして喜び合ったかのような、妙な感覚と感動で涙ぐんでしまった。中には改稿前のものを既に読み終えておられるのに、カクコンの為に再読までしての友情の大きさには、感謝の言葉を幾つ言えばよいだろうと心から悩んだほどだった。
「カクコン10」が終わると今度はすぐに「KAC25」がスタートした。次々と出る五つのお題をたった数日の間隔で書きあげていく皆の筆の力に驚きながら、「噺家ごっこ」で応援頂いた私は、今度は全力で皆さんの応援に向かおうと張り切っている。毎晩遅くまで作品を読みふけりコメントを書く超高齢者ローバの目は、ショボショボし肩は凝りボーっとなり、とヨレヨレの身状態での応援である。
「KAC25」の選考が終了すればまた次に、何かしらのコンテストが待っている。それは作家を夢見る人、書くことがたまらなく好きな人達にとって、嬉しくもあり悩ましくもあるだろう。投稿サイトで書籍化されてヒットした作品は沢山あり、そのタイトルを街中で見かけたりするのはとても喜ばしい。そんなことが私のカク友さんにもあったなら、どんなに嬉しいことだろう。
その感激はおそらく、数年前ミュージシャンになった親戚の彼の曲をスーパーや美容院で聞いたり、テレビのアニメのエンディングで流れるのを聞いた時にとても誇らしかったが、その時と同じような気分になるんだろうなと想像する。
そんな時には私はまた大喜びして、夜遅くまでせっせと作品を読みお祝いのメッセージを書くのに忙しい「ショボショボ目でコリコリ肩の老いぼれローバ」となるのだろう。
「噺家ごっこ」
https://kakuyomu.jp/works/16818093087398096649
読んでやってもいいよ、と思われる方はこちらへ
宜しくお願いします
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