極短編『あだ名』
──部室
「わたくし達も長い付き合いですのに、
どうしてあだ名ではなく名字呼びなんですの!?」
突然やってきた長岡が言った。
「えっ、いきなり人の部室に上がり込んで何言ってんだお前」
部長は困惑しながら言った。
「急にふと違和感を感じたんですわ」
「たぶんそれなんかの病気だよ…」
「でも長岡さんにあだ名を付けると、
お嬢様とかになって却って長くなるし…」
メガネが言った。
「私だってあだ名とは違うし…」
ストレロクが言った。
「お前は本名が分かんねぇしな…」
部長が顎を撫でながら言った。
「とにかくわたくしもあだ名で呼ばれてみたいですわー!!」
駄々をこねながら長岡は回転した。
「でもよぉ、呼び方なんて関係ないじゃないか…
あたしらの関係が変わるわけじゃないし。
ほら…あたしら所詮ビジネスの関係だし…」
「えぇー…」
「大体あだ名で呼びあうならあたしのこと部長って呼ぶのかよ
お前の部を吸収合併するぞ」
「ひどいですわ!」
「部長ってあだ名なのかな?」
新入りが言った。
「あだ名ってそもそもなにかわからなくなってきた」
PPが言った。
「ほら!お前のせいでウチの部員たちが混乱し始めてるじゃないか!」
「新入部員がきたら私ってどうなっちゃうのかな」
新入りが頭を抱える。
「新入りのアイデンティティが揺らぎ始めちゃったよ…」
「大丈夫だよ、新入りが来ても新入りは新入りだよ」
「紛らわしいな…」
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