行間 ***の記録
何時からだろう。その魔法を手にしたのは。生まれ持ったものなのか、成長するにつれて身につけたものなのか。それは誰にも分からない。ただ、1つだけ言える事がある。それは一一
一一こんな魔法なんて、持たなかったら幸せだったかもしれないのに。
私がまだ小さかった頃に、家に大勢の人が来た。後になって分かった事だが、魔法省の役人達らしい。
「此処は
「はい、間違っていませんけど...」
私は部屋で、やって来た偉そうな人達にお母さんが応対していたのを聞いていた。この時、家には私とお母さんしか居なかった。
「よし、なら家の中を探せ!お前等はこいつが動かないように取り押さえてろ!」
「え!?ちょっと待って下さい!貴方達は何をしに来たんですか?!」
「我々は魔法省の魔術統制課だ!この家に希少魔法の所持者が居ると言う情報があり、こうして訪れた!見つけ次第保護する!貴様も邪魔しようとするならば容赦しないぞ!」
足音が聞こえて来て、私は慌てて隠れたが、程無くして見付かった。
「見付けました、隊長!」
「よし、そのまま連れて行け!」
「お、お母さん、いやぁあ!」
「止めて!うちの子に何を一一」
「えぇい五月蠅い!」
「うっ...」
お母さんが殴られて倒れ込む。私は、必死になって叫んだ。
「いやっ、いや!お母さんっ!!」
「......っ、うちの子を、連れてなんて、行かせない、わ...」
お母さんが私を連れて行こうとした人の足を掴んで抵抗する。
「ちっ...面倒だ。こいつを撃って黙らせる!」
「えっ、しかし隊長、流石に、一般人に対して発砲するのは...」
「構わん!こいつは我々の業務を妨害している!それで十分だ!ついでに、こいつも黙らせろ!但し死なせたりするなよ。」
「はっ。承知しました。」
パン、と乾いた音が鳴る。それと同時に、お母さんの手から力が抜ける。私は絶句した。
「......ぁ、あぁああっ!!お母さん!お母さ一一」
頭に強い衝撃が加わって、私の意識が遠のく。そのまま、連れて行かれた。
「......か、」
意識が完全に無くなる直前、私はもう一度パン、と言う音を聞いた。
目覚めた場所は、病室に似ている白い部屋だった。
「う...ここ、どこ...?」
頭がズキズキする。窓も時計も無いので、私がどれ位の間、気を失っていたのかも分からない。見回していると、ドアが開く音がした。
「......だ、だれ?」
「目覚めたのか。私が誰かはどうでも良い。お前は今日から、魔法省の魔術統制課に仕え、ひいては国の為に戦うのだ。良いな?」
私は、その時言われている意味が分から無かった。戸惑って黙っていると、その人が怒ったように言ってきた。
「良いな?返事をしろ。」
「え、ど、どういうことなの一一」
「黙れ。お前は希少魔法を所持している。だからこうして、我々に仕える事となったのだ。光栄に思うが良い。それと我々に対する返事は「はい」のみで、敬語を使え。返事は?」
「......は、はい。」
私が返事をすると、その人は頷き、付いて来いと言った。私は付いて行った。怖かったからだ。目覚めた時から、私には首輪が付いていて、外そうとしたが外れなかった。それでも外そうとしたら、電流のようなものが流れてきて、激痛が走ったのだった。多分この人達に反抗したら同じように痛い目に遭うのだろう。そう思うと、怖くて従うしか無かった。
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