第75話 リア・クラークは『乗馬服』に着替え『乗馬靴』を履いて、脱いだ制服を置きに女子寮の自室に向かう

私は乗馬服とブーツを選んで、試着室のような場所で着替えた。

日本の試着室のように、布で仕切られ、中には姿見の鏡が掛けられている。

私が選んだ乗馬服は、シャツのフリルが多めなのがちょっと気になったけど、でも、着心地は良い。


私が選んだ乗馬服は銀貨8枚で、ブーツは金貨5枚で販売されていた。

乗馬服は『乗馬服制作』の授業で、生徒の手によって作られた乗馬服のようだが、ブーツは持ち込み品を買い取った物なのかもしれない。

とりあえず、身体が大きくなったり、足に合わなくなったら、購入価格の半値とはいえ、引き取ってもらえるというのがありがたかった。


私はこの乗馬服とブーツを購入すると決め、試着室のような場所から出る。

でも、乗馬服とブーツだけで、ヘルメットは無いのかな?

落馬した時に頭を守る物があった方がいいと思うんだけど……。

副担任の先生に聞いてみよう。


「先生。質問があるんですけど……」


「ええ、どうぞ」


「頭を守る物は無いんですか?」


「頭を守る物? それはどういうものですか?」


「ええと、丈夫な帽子というか……落馬した時に頭を打っても守られる物です」


どうやら、ネルシア学院には乗馬用のヘルメットは存在しないようだ。

転生者の知識をひけらかすのは危ない気もするけど、でも、乗馬をする自分の命を守るためだから、頑張って話をしよう。


「それは興味深い話です。授業後に詳しく聞かせてください。乗馬服と乗馬靴は、今身に着けている物を購入しますか?」


「はい。あの、着ていた制服はどうしたらいいですか?」


「手間をかけて申し訳ないけど、一度、寮の自室に戻って制服を置いて来てください。本当は、着替えを置いておく部屋があればいいんだけどね。乗馬服と乗馬靴は、授業後に学生証で清算します」


「わかりました。制服を寮の自室に置いた後は、厩舎前に行けばいいですか?」


副担任は私の言葉に肯き、口を開く。


「学生証は持ってきてね」


「はい」


私は副担任に肯き、脱いで畳んだ制服を手に持って、女子寮の自室に向かった。

『空間収納』スキルをゲットできてたら、女子寮の自室に戻らずに厩舎前に移動できてたのになあ……。


女子寮の一階の角部屋の105号室の鍵を開け、脱いだ制服を『清潔』スキルをかけてもらう用の箱に入れた私は、乗馬服のベストのポケットに学生証を入れていることを確認して、部屋を出た。

首から下げた鍵でしっかりと部屋を施錠し、厩舎前に向かう。


授業後にヘルメットの話をするのが、今さら、憂鬱になってきた。

でも、自分の頭と命を守るためだから、話した方がよかったよね。

乗馬が大好きなドロシーにも、ヘルメットをかぶってもらった方が安全だと思うし……。


今日の授業はヘルメット無しで臨まないといけないんだから、気をつけよう。

私は厩舎に向かって歩きながら、ひそかに気合を入れた。

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