自分好みに育てたい

 夜。LINEビデオ通話で、咲さんと今度のデート計画を話している。


「今度は、そちらの近くのショッピングモール行きましょうよ!」

「いいですね、何見たいですか?」

「和泉さんにもっと似合う服を探します」

「え、そんなにダメでしたか?」


 咲さんに会う時は、ジャケットとか、くたびれてないのを選んだつもりだったんだけど……。

 咲さんは「ダメではないんですけど」と言った。


「和泉さん、自分に似合う服って言うのを全然考えてないんですよ! スリムなんだし背は普通にあるんだし、絶対もっとかっこよくなれます!」

「そ、そうですか?」


 ポテンシャルをほめてくれるのは嬉しいが、同時に今の状態はあまりよろしくないとも言われてるなこれ……。


「だからわざわざ和泉さんちの近くのショッピングモール行くんですよ、和泉さんが今後ちゃんと似合う服選べるように」


 き、気遣い!


「ありがとうございます……」

「和泉さんは割とブルベ夏だから、それにあったの選びますね」

「あー、パーソナルカラーってやつですか、男にも対応するんですか?」

「めちゃくちゃしますよ! 各パーソナルカラーに「芸能人」ってつけて検索したら、例がいっぱい出てきますよ」


 へえー、そうなんだ。

 そういうわけで、今度の日曜は咲さんと近くのショッピングモールに服を買いに行くことになった。通話が終わって、そばで組紐を作っていた千歳が『パーソナルカラーってなんだ?』と聞いてきた。


「最近の流行りなんだけど、自分の肌色とか目の色を分類して、分類ごとに自分に合う服の色とかメイクの色とかを割り出すんだ」

『お前はぶるべ夏っていうのなのか?』

「うん、肌がブルーベースで、夏っぽい色の服が似合いますよってことだね」

『へえー、どんなのか調べてみよっと』


 千歳は手元のタブレットを引き寄せ、何事か入力して難しい顔をした。


『咲さんが、芸能人ってつけて検索したらたくさん出るって言ってたけど、全部イケメンで全然お前に似てない』

「そりゃ芸能人と比べたら分が悪いよ!」


 俺は千歳のタブレットを覗き込んだ。俺でも名前を知っているような芸能人ばかり。本当にイケメンだらけで、全く俺との共通点がない。


『まあ、でも、咲さんいい女だな。お前をいい男に育ててくれるんだから』


 それはそう……俺がいい男じゃないなら、放っておいて他に行けばいいのに、わざわざ俺に手をかけてくれるんだから……。

 まあ、服代がかかるデートだけど、日曜は頑張るか。

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