番外編 金谷千歳とバラ園
和泉と一緒に、またイングリッシュガーデンに来た。バラ園はまさに花盛りで、ピンクや赤のバラだけじゃなくて、黄色の薔薇、クリーム色のバラ、紫のバラ、色とりどり。冬とは大違いだ!
和泉は、咲さんと会う話が出てから緊張してるのか、なんとなく憂いある顔が多かった。だから、今日は楽しんでほしい。
『ちゃんとデートの練習しろよ!』
「おばあちゃんに送るバラの写真撮るだけだよ」
和泉は苦笑した。
五月の青空にはどんな色のバラも映える。花びらがたくさん折り重なってポンポンみたいになったバラがかわいくて、ワシも写真を撮った。
歩いたり写真取ったりしながら、和泉が言った。
「咲さんは人にメイクするのが好きみたいだからさ、もしうまく行ってもコスメ店巡りになるかも」
『ふーん』
「明日メンズメイク教えてもらう件はさ、一応、教えてもらうお礼をなにかさせてくださいって言ったんだけど、メンズメイク教えた後に、咲さんの好きにメイクさせてくれればそれでいいって」
『ふーん、本当に人にメイクするの好きなんだな』
和泉のバラの写真も見せてもらった。ワシのと見比べたけど、やっぱりこいつのほうがうまいなあ。
『うーん、お前ほどうまく撮れないなあ』
「普段やってるかどうかだね。逆に千歳は料理の写真うまいじゃん」
『そっかあ』
こいつは、散歩のたびに近所の家や公園の花の写真取ってるからなあ。
和泉が、すこしためらってから言った。
「あの……おばあちゃんがさ、また千歳と俺のツーショット写真見たがってるから、奥のいい感じのスポットでバラをバックに撮らせてほしいんだけど」
『うん』
たくさんバラを見て、たくさん写真を撮って。横浜駅に戻ってから、初めてスターバックスって店に行った。
『ちゃんとスターバックスのサイト調べて、カスタムっていうのメモしてきたんだ』
ワシはカバンからメモ帳を出した。
「何頼むの?」
『キャラメルフラペチーノのコーヒー多め、追加にキャラメルソース、チョコチップ、ホイップ』
「甘いの好きだねえ」
『あと、お昼にえびアボカドカンパーニュと、デザートにニューヨークチーズケーキと、チョコレートスコーンと、あんバターサンド』
「本当に甘いの好きだねえ」
和泉は笑った。なんか、嬉しそうだった。
「俺もえびアボカド頼もうかな。たまになら油多めでも大丈夫だろ」
『そうだな』
和泉の顔にあった、憂いがなんかなくなってる。一緒に遊び歩いたら、少し緊張ほどけたのかな? 嬉しいな。
明日は、和泉と咲さんが初めて会う日。和泉は優しくていいやつだし、緊張しなければうまくやれると思う。
うまくいくといいな。
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