解呪の人を教わりたい

 勉強会は無事に済んだ。けど、千歳が俺の名前を呼べるようになるまでは、まだかかるらしい。

 佐和さんからのLINEビデオ通話で、九さんが言った。


「解呪できる者はな、断るような女ではないんじゃがのう。携帯電話やインターネットがないもので、返事をもらうまで時間がかかっておる」

『どういう人なんだ?』

「人ではないな。化け狸じゃ」

『へえー』


 千歳はそんなに驚かなかったが、俺は驚いた。タヌキ!? 

 いや、九さんだって化け狐だし、化け狸だって普通にいるのか。いや、でも、びっくりした。


「えーと、そのタヌキさんって……九さんみたいに不思議な力を持ってるタヌキさんなんですか?」


俺が聞くと、九さんは「そうじゃな」と言った。


「化け狸じゃからの。深山と言うんじゃが、千年以上生きている古狸じゃ」

「その、そういう世界に疎いので全然知らなかったんですが、化け狸って普通にいるんですね」

「普通におるぞ、数は少ないがの」


 九さんは頷いた。


「化け狸は狐より人と交わっておっての、人と子供を残している化け狸もかなりおる。こないだの金谷の婿もの、四代くらい前に化け狸が混じっているようでの」

「え、そうなんですか!?」


 狭山さん、タヌキの血が混じってたの!?


『へえー、だからいきなり素質が出たのか』


 千歳は納得したように頷いた。そういうもんなの!?

 俺は千歳に聞いた。


「タヌキの血が混じってると、霊感が出るの?」

『ただのタヌキじゃなくて、化け狸な。化けられる時点で素質あるんだ。でも、本気で人間に交じるなら、素質は術で隠すんだけどな』


 九さんは「その通りなんじゃが」と頷いた。


「四代後じゃからのう。あと、あの金谷の婿は頭を打った後に素質が出たということだし、隠す術が頭を打った時に解けてしまったんじゃろう」

『あー、なるほど』

「そういうものなんですね」


 その隠す術っていうのは、先祖代々続くものなのか。すごいな。

 九さんは言った。


「まあ、そういう訳で、話の分かる相手に頼んであるし、必ずお主が和泉の名前を呼べるようにしてやる。もう少し待て」

『うん、よろしくな』

「よろしくお願いします」


 俺は九さんに頭を下げ、千歳も俺を見て九さんに頭を下げた。

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