第45話 悲劇の予兆?
帰宅すると、一通のメッセージが晴也の元に届いていた。
差出人は妹である真弥からのものである。
何度も何度も受信音が響くが、晴也は無視を決め込んでいた。
その理由は単純。晴也は帰宅してから、数少ない趣味の一つである少女漫画を嗜んでいるのだ。
(……学校ではハラハラドキドキの生活を送っているから、少しは許してくれ妹よ)
(それになんだ。姫川さんの告白の件といい……交流会のことといい考えることが多すぎる。今くらいはゆっくりしたいのだ)
そんな晴也の内情など知る由もなく、受信音は止まらない。
通知を切ろうと携帯の画面を見たところで、晴也は目を『げっ』と細めた。
『お兄ちゃん☆♪ 交流会休んだらだっめだぞ◇』
まず一通目。
ひと昔前のスパムメールか、と晴也は内心で突っ込んだ。
……真弥のやつ、携帯乗っ取られたりしてないよな?
思わずそう不安になってしまう。
だってあの真弥がお兄ちゃん呼びをしているのだ。外面を気にしないといけない場面ではなく、個別のメールなら晴也とか平気で呼び捨てしてくるはずだ。言ってて悲しくなるな。だが現実である。
そのため、真弥はあえて『お兄ちゃん』呼びをしてきているのだろう。
(……っつか、なんで交流会のこと知ってるんだよ)
同じ学校ならともかく真弥とは別の学校であるし、何なら別々に暮らしている。
だからこそ、晴也は交流会のことを認知している事実に目を丸くさせる他なかった。
だが、二通目で真弥は答え合わせをしてくれていた。
『ちなみに、あの三人のお姉ちゃんから教えてもらいました! 交流会のこと! お兄ちゃん、休んだら分かってるよね?』
最悪。
この二文字が晴也の頭の中を支配していった。大方、S級美女達が真弥に教えたという流れだろう。
(なんで仲良くなった? いやホントに。俺はほぼ初対面の仲で仲良くなんて絶対出来ないんだが………)
そんな卑屈はさておき。
近々、一泊二日の交流会が新入生たちの間で学校行事として開かれることになっている。
S級美女の一人である沙羅が晴也と同じ班であって、晴也の頭の片隅には欠席することも考えていたわけであるが……。
(いや、脅しかよ……大方、休んだら家に突撃でもしてくる気なんだろうな……あ~嫌だ嫌だ)
晴也はため息をついて返信をする。
三通目からはタチの悪いスタンプの連打だった。………いや、子供か。
交流会に出る旨を伝えるとすぐに既読がついた。
『晴也の思い出。まあ、良くなるといいね』
(……情緒不安定かよ。急に素に戻ったしよ)
晴也はその場でため息をついてから、顔を仰いだ。
沙羅の告白。他のS級美女達の動向。
頭にとどめておかなくてはいけないことは山積みである。
晴也は少女漫画の世界に戻って、現実から目を背けた。
ついでに、妹の真弥のメッセージに続いて今度は沙羅からメッセージが届いていた。
内容は『返事はまだ聞かない』といった趣旨のもの。
恐らく時間が経ち冷静になった今、振り返って恥ずかしくなったのだろう。
晴也は沙羅にも了解、と一言だけ返信した。
(……まあ、下手に動かない限りは大丈夫だろうな……交流会は。それに休んだら周りにも迷惑はかけるだろうしなぁ)
そう思うことにして、晴也は交流会の参加を決意するのだった。
だが、交流会でこそ波乱が待ち受けているのを晴也は知らない。
S級美女達の追撃が始まることを。本気で晴也を追い詰めてくることを。
呑気に考えている晴也は知らずにいた。
―――そして、そのまま交流会当日を晴也は迎えることになる。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【あとがき】
いつもお読みいただきありがとうございます!
更新お待たせしました。
次回からは交流会に続きます。
さて、少しだけ宣伝させてください。
おかげさまでご存じの方も多いと思いますが、【6月1日】に角川スニーカー文庫様より、
本作を発売することができました!
カクヨム版とは内容がガラリと変わっているため、新鮮な気持ちで書籍版をお読みできると思いますので、本作が好きな方は書籍版を間違いなく楽しめるかと思います。
良ければよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます