第10話―なみだ―

「こんなところで呼んでなにをするのズイ」


期待きたいとよろこび。かき混ぜったみたいなキレイな目を向けて、きいてくる。

ぼくとアツがいるのは近所の公園。

ここではじまたカップル、おわらせるのも同じ場所として選んだのは感傷的のようなものだった。


「アツに言わないといけないことがある」


「えっ!なになに?言わないといけないって」


「わかれよう」


「えっ?」


何を言っているのかアツは理解していないように目をみひらく。

待ってもアツを見ていると時間が止まってしまったのでは思ってしまうほど、ここだけ静さでいっぱい。


「アツのこと好きじゃなかった。付き合えることはできない……付き合ったらいけなかったんだ」


「そんかことないよ!勝手に決めらないでよ」


「そうだよ。まことに勝手な理由だと反省している。でも、それでも今このままでいることが間違っているんだ。

向けられる好きというものが正常では無かったからなんだよ」


「わかんないよ。ズイが言うことはなんでも難しくしている。自分だけが分かるように自己完結しないでよ」


アツはいていた。

なみだを流している。

そうさせたのは、ぼく。

傷つけたくはなかった。

でも今さら付き合おうことも出来ない。

……引けない。


「学校では、かくれて付き合っている必要もなくなった。おわりにするんだアツ。

ぼくらは子供だったんだ」


「……つまりズイは子供だから付き合えないの」


上目づかいでアツは、すがるように言った。


「ちがう。こんらん、していた。ほんとうに恋をするには早すぎたことだよ」


「それなら、やくそく。

今よりも少しだけ、おとなになったら付き合って」


「考えさせてもらうよ」


その日、ぼくとアツの関係はおわりをむかえた。そのあとの言葉は他人にたいして使うようなものばかりで空気のようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る