ニガクながい予約の道

立花戦

第1話―恋人ごっこ―

ずっといるようではなれているみたいだ。

小学生として過ごせる最後の一年。

ぼくの心は今日の天気とおなじく晴れやかでいてなんでも出来そうな気持ちにいていた。

この日は近所のスーパーでデートしていた。


「ねぇズイ。こうしていると本当の恋人みたいでドキドキするなぁ。

なんだかたのしい、たのしい!」


ぼくのとなりで明るくまぶしくわらうのは徳川篤姫とくがわあつひめ

同い年であるカノジョは無邪気になって

騒いでいる。


「うん、新鮮しんせんでこれはこれで楽しくあるよ。でも買い出しを買わないと、お母さんに怒られないかな?そろそろ五時になるわけだし」


「あっ、そうだった。

えーと今日はマーボードウフにするから……とうふ、おにく…それと……メモみよう」


赤いロングスカートのポケットからスマホをとり出すと操作そうさしようとロック画面をすばやく動かして入力していく。

ぼくには、まだスマートフォンというものを持っていないから少しだけ…うらやましい。


「みそしるのざいりょう!ネギとか入れる色々いろいろと必要みたいだね」


デートに、はしゃぐアツヒメはめちゃくちゃハイテンションだ。こうなると言葉などを知っている数の語彙力ごいりょくがみるみると下がっていくようなことになる。


「りょうかい。

それじゃあ野菜やさいコーナーにもどろうか」


「はーい」


この子とは恋人だけど本当の恋人ではない。

ただ仲のいい友達で恋愛という気持ちをいだいていない。

恋人ごっこ。

篤姫あつひめがマンガをよんでキャラクターようなんてことしたい!とそう言った。


「ネギと……ほかには」


「ニンジンとじゃがいも。ズイいっぱいあるけど、どれが安くて、おいしいとおもう?」


ズイとしたしげにそう下の名前で呼んでくれるアツヒメ、ぼくの名前は武市瑞山たけちずいざん

まだ本当の恋というとのを知らない小学六年生。このつきあいは、となりの友達が好奇心からはじまったもの。

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