第13話 星域に破壊が満ちる時 ③

 武装惑星デルニアのある星域に着いたガリヴァー、デルニアへ向けて通信をとばして待つ事およそ一時間。依然として応答は何も無い、その間に惑星デルニアの周回軌道へ艦を乗せてから惑星全体をスキャンしていたのだが、生体反応は検知されず(知的生命体以外の動植物や微生物等は除く)、地表を衛星軌道から撮影しても廃墟と荒野が広がるばかりで何も見つからなかった。

 

「なあ副長、何度も聞いてるけどここが武装惑星デルニアでいいんだよな?」

「はい艦長。間違いありません」

「衛星写真の詳細な解析はどうだ?」

「もう間もなく終わります」

 

 衛星写真とスキャンデータから推察するに、何らかの事故ないしは事件によって武装惑星デルニアは壊滅してしまい、住民達は避難したものと思われる。

 念の為ドロイドを数体シャトルに乗せて地表へ送り探査させているが、今の所成果はない。

 

「艦長、衛星写真の解析が終わりました」

「報告頼む」

「どうやら武装惑星デルニアはベクターに襲われて壊滅したようですね」

「ベクターに? 武装惑星て頭に付くくらいだから相当な軍事力が配備されてるだろ?」

「はい、惑星そのものを一つの軍事要塞に改造してましたので難攻不落と評されていました」

「そんなデルニアを落とすベクターてどんな奴なんだ、それともイナゴの大群みたいに物量でおされたか?」

「いえ、ベクタークイーンです」

「っ!?」

「更に詳細な解析が終わりました。ふむ、襲われたのはつい二週間前ですね」

 

 ほぼすれ違いだ、ほんのちょっと速ければベクタークイーンと遭遇していた可能性もあったという事になる。

 そして武装惑星を壊滅させた化け物がまだこの近くにいる可能性もある。

 

「直ぐにこの星域全体をもう一度スキャンしろ! 副長はデルニアと周辺被害の状況からベクタークイーンの進路を特定! 地上に降りたドロイドを回収してこの場を離れるぞ!」

「はい艦長」

「ヒデさん! 直ぐにこの星域を離れる、エーテルドライブの準備を」

「安心しろ、こっちは艦長の命令があれば直ぐとばせる」

 

 頼りになる機関長だ。


「艦長、この星域にベクターの反応はありません。被害状況からベクタークイーンは〇三〇七一の方向へ向かったようです」

「よし、ドロイドの回収は」

「現在シャトルでこちらへ戻っているところです。あと十二分で帰還します」

「回収が終わったら出発だ」


 武装惑星デルニアのある星域は通称デルニア星系と呼ばれているのだが、知的生命体がいる星はデルニアしか無いため、この星で生体反応が検知されなければ星域全体から知的生命体が消え失せた事になる。

 ベクタークイーンは一つの星域を破壊で満たしたというわけだ。

 

「ドロイドを回収しました」

「ヒデさん、エーテルドライブを開始する!」

「了解した」

 

 エーテルリアクターの出力が上がりエンジンが唸りをあげる。充分なエネルギーが貯まった段階でエーテルドライブを敢行してこの星域を離れる。

 進行方向はベクタークイーンと違う方向を選ぶ、今回は惑星エンシワがある方へ向かう事にした。光速より速いエーテルドライブを使う事でトンネルのようなエーテルフィールドを形成し、一定距離を歪めてショートカットを作っているのだが、一度に進める距離は十光年までが限界であり、また次のドライブまで時間を要する。

 そして最大の問題点が、エーテルフィールドを抜けたところを事前にスキャン出来ないことである。一応出る直前にある程度調整ができるので障害物を避けたりはできるが、その周辺の状況を知ることはほぼ不可能なのである。

 

「エーテルフィールド抜けます」

 

 グンと前に引っ張られるような感覚に耐えながらフィールドを脱する、すぐさまスキャンを開始して確認。

 この旅においてこの瞬間だけは緊張感をもっていなければならない、こないだのベクターとの遭遇はまさにフィールドから出たら目の前にベクターがいたという状況だったのだ。

 

「ベクターの反応でました」

「迎撃用意!」

「待ってください艦長、ベクターと同じ場所に救難信号をだしている艦があります」

「助けるぞ、どこの艦だ?」

「データベースにありました。艦名はドレニアメロー、エンシワ連盟に加盟しているドラゴニアの艦です」

 

 進路をベクターに定め通常エンジンで加速する。

 星域を破壊したベクタークイーンの恐ろしさを垣間見て逃げ出し、途方もない敵の強さに絶望しかけたが、どうやら運命というものは悲観する暇を与えてくれないらしい。

 

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