先輩、今日はシチューにしましょうか
大船パセリ
第1話
「西木君。今日、君のお家にいってもいいかな?」
「え?」
俺の通っている高校の先輩、
先輩は運動こそできないものの、成績は良い。
そして誰もが「可愛い」と口をそろえて言うであろう彼女は、くっきりとした二重に、その下にある大きな目。唇は透き通るような肌の上に桜色の彩りを添え、肩の下のあたりまである髪を1つにまとめて、絵に描いたような美少女だ。
こんな先輩がなんで俺の前にいるのかって?そんなことは自分でもよくわかってなんかいない。
「何ボーっとしてるの?まぁそういうことで君の家に行くから、ほら。早く準備して」
この時家に来るだけ、なんて考えが甘いことはわかるはずもなく家路を辿ってしまった。
*
退屈な春休みの終わりを告げる入学式。
なんにも。本っ当に何もないまま入学式が過ぎていった。アニメや映画のような美少女との出会いだったり、運命の再会だったり。
けれども何にも起こらないまま高校生活をスタートさせてしまった。
そんなドラマチックなことがそこら辺で適当に生きている平々凡々な高校生に起こるはずもないか。
そんなボーっとした頭で適当に面白くもない始業式に臨んでいた。
「今年度の生徒会長からの挨拶。並びに役員指名です。生徒会長お願いします」
「はい」
全校生徒に見つめられる中、生徒会長は颯爽と壇上へと上がった。
「皆さん、おはようございます。生徒会長を努めます。二年四組の大河原真依です。私の公約は、記憶に残る最高の一年間をこの場にいるみんなで一緒に作る事です!一年間で最高の思い出を、この最高の学校でここにいるみんなで一緒に送りたい。これが私の願いです」
生徒会長は眩しい笑顔で生徒を見回し、話を続ける。
「まぁ私の話はこんな所にして。それでは皆さんお待ちかねの役員の発表をしましょうか!議長、二年二組
強いての新生活イベント最後の砦として残っているのはこの学校の生徒会伝統の役員指名だ。
そしてこの役員は会計、又は書紀。もしくはこのどちらもに一年生が必ず選出される。
「最後に一年生から!会計、一年四組。
まぁここまで何もなかった俺にそんなことがあるわけない。と、完全に諦めていた頃、ドラマは動き始めたのだった。
「そして最後に今年の書紀は、一年三組。
呼ばれた?俺が?
いやそんな。噓だろ?
一瞬思考が止まりそうになる。
呼ばれた瞬間、周りの目が俺に集まる。
というか、みんなそんなに俺を選んだ事は意外か?
まだ入学してから一週間も経って無いのに俺のことを下に見るなよ。そんなに驚いている君たちよりも断然驚いているんだからな。
名前が出て、立ち上がるだけでかなりの人の。いや、ほぼ全校生徒の視線を一気に浴びせられる。
きりきりと痛む胃をなでながらやっとの思いで壇上へと向かった。
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