遊離探偵☆ ユーリ!

れなれな(水木レナ)

わたしはガイド

 わたしはかりそめに”ガイド”と呼ばれている。

 廃墟と言われる山荘をさまざまな逸話と共に案内する。

 だから、まあ、公には、わたしの仮の職業は”ガイド”ということになる。

 ただ、それというのは、どうやら世間的には結構、日陰よりの言い方らしいので(なら、世間的に需要もあるのに、認知のしかたがあんまりじゃないかっていう気もする。)だいたいはわたし、「オーナー」と呼ばれている。

 山荘がすべてわたしのものではないが、そのうちのいくつかは、わたしが実際に持っている――廃墟だが――そこの案内になるので「オーナー」であり「ガイド」なのだ。

 わたしの呼び名がそうなった理由は、とても簡単。

 過去に……そして今でも、わたしが、廃墟という山荘の中、どの場所(ただすたれている地域と廃墟の区別がよくつかないのだ、わたし。世間はただすたれている地域と言う名の小さな枠にとらわれていて、そこには廃墟という犯罪の温床がたくさんあることに気づかない。その危険性とか、内在する犯罪者の暮らしとか、社会的な目配りとか、警戒心の薄さとか。でも、これは、全部まとめて、放置という名の犯罪と呼ぶのでは、何か問題があるのだろうか。)でも、よそから訪ねてきた来客にガイドをすすんでするから。廃墟の中の、どんな逸話でも、わたしは必ず、ガイドを自分の任務にするから。

 これには裏の事情がある。

 リゾート開発に失敗した土地は安く手に入る。

 実のところ持ち主は早いところ処分したいのだ。そういうのを手に入れて、ガイドをする。あやしさいっぱいだ。

 だがそれでいいのだ。

 というのは、世間が気にする場所とはちょっと別の、そして少しずれた箇所には、犯罪の証拠が隠してあるからだ。

 何故かは省くけれど、世間が知らない犯罪は、金で隠蔽されていることが多い。(というか、犯罪の隠蔽率の高さは、すべて金次第だ。)だから、その周辺には、必ずハエがたかる。人間のクズ。ここで、廃墟とクズ両方のニーズに、自分の特性をすりあわせると、この廃墟のどこがウリになり、かつ犯罪を隠しつづけるのに都合がよいか、わたしの足跡や手筋らしさを消せるか、わかってくる。所有する廃墟が、わたしの管轄になっていれば、この地域にいる限り、わたしは、完全にわたしのニオイを消せるのだ。

 闇の人間らしさ、その手の人間のもつ腐敗臭が。

 もし犯罪の証拠をつかまれても、ここいらの物騒きわまりない噂話と逸話が覆い隠してくれる。

 もちろん、そこまで踏みこんでくれた人間には大なり小なりの手段によって消えてもらう。

 ああ、なんて定石。

 今日も今日とて昼間から、廃墟めぐりの客が来た。

 さあ、どうやって遊ぼうか。

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