登校のワンシーン
バブみ道日丿宮組
お題:今日のゲストは「えいっ!」 制限時間:15分
「だーれだ」
登校中ふいに視界を遮られた。
「誰でもいいよ」
「よくないよ!?」
視界が開放された。
振り返れば、やっぱり幼なじみの姿。
「だいたいこんな目隠しなんてするの君ぐらいでしょ」
中学生にもなって、子どもっぽいことを彼女はよくする。
「じゃぁ、応えてくれたっていいじゃない」
「やだよ、めんどくさい」
ただでさえ、幼なじみと二人でいると嫌な視線を向けられるのだ。これ以上増えられても困る。
「仲良くしようよ? チューしちゃう?」
「しないよ」
歩き始めると、彼女は横に並んだ。
一緒に登校なんてしなくていいのに。
「あのさ、いちいち僕に付き合わなくて良いんだからね、優等生さん」
「その言い方はなんか嫌だな」
事実だ。
彼女は好成績。そして僕は低成績。
容姿も美女と野獣とはいわないが、差が激しい。
「ひょっとして気にしてる?」
「付き合ってもない男女が二人でいるってのは、ダメでしょ?」
持論を口にする。
「女友達ってのはあると思うよ」
「すっごい陰口言われてるの、知ってる?」
しかも聞こえるように教室内で言ってる。聞こえてるそれらは陰口とはいわないか? 違う?
「そうなんだ。ごめんね?」
悲しそうな顔を浮かべられると、
「いいよ、謝らないで」
胸にくる。
「じゃぁ、手繋ごう? えいっ!」
応える前に掴まれた。
「……仕方ないな」
小さく了承をぼやく。手を繋がれるとなんだか離したくない心境に陥る。
それ以上の発展は望まないけれど、彼女の手だけはなぜか保持してたい。
「仲良しさんはこうやってないとね」
これはもはや恋人と同じではないだろうか。
また……陰口が強くなるだろうな。
「なんか辛いことあった?」
「ないよ、別に」
これからあるかもしれないとは口にできなかった。
別に虐められてるわけじゃない。文句をいいつつも、クラスメイトはきちんと大人の対応をしてくれる。体育の準備体操のペア、学校行事のグループ。
のけ者にされるなんてことは今まで起きてない。
むしろ、彼女の履いてる下着は何色だとか、どんな匂いがするとか、そういったことを興味津々に聞いてくるぐらいの距離感だ。
友達になれるかもわからないけれど、未だに進展してない。
もう中学1年の真ん中を過ぎたのだ。友達の一人や二人作るべきだろう。
「そっか。今度ね、一緒にでかけない?」
「機会があればね」
でも、今は……今だけは彼女だけが友達でいいかなって、僕は思うのであった。
登校のワンシーン バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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