真の闇より無闇が怖い!〜本当の愛〜

かぬち まさき

第1話 幼なじみのお姉さん

「ねぇ美咲、今日帰ったら例の配信者の動画絶対見てよね!」


『どうかなー。私あんまり動画とか見ないから…覚えてたら見るね。』


私の名前は吉岡美咲。どこにでもあるような、普通の中学の2年生だ。

隣で一緒に下校しているのは、幼なじみの奥間紗英。小学校から一緒で、今も同じクラスだ。


家も近所であったから、小さい頃からずっと仲良しで、今もこうやって登下校している。

いつものように、たわいない会話をしていると、前方に黒いストレートの髪の女性が視界に入る。


「あ、美咲!綾乃さんだ!綾乃さん、大学卒業して、また一層キレイになったよね。大人の女性って感じで。」


綾乃さんとは、私たちの町内で有名な美人のお姉さんだ。美人なだけでなく成績も非常に優秀で、地元の国立大学を卒業後、公務員として働いている。私たちが小学生の頃、綾乃さんは既に高校生だったが、小学生ながらに憧れていたのは覚えている。


「綾乃さんはすごいよね。美人で性格もよくて、それでいてしっかりしているから、ウチの町内の自慢だよね。あ!隣にいる人、彼氏かな⁉︎」


『え!どこどこ⁉︎って、かなりイケメンじゃん!あー、私もいつかイケメンの彼氏が欲しいなー。』


綾乃さんの隣には、短髪の爽やかな男性がいた。男性の方は笑顔で話しているのだが、綾乃さんは表情が暗いように見えた。

順風満帆そのものの綾乃さんの人生に、悩みなんてあるのだろうか?


「あ!イケメン彼氏がこっちみた!」


私と紗英はとっさに会釈し、男性の方も爽やかに笑って会釈してくれた。

気のせいか、男性は目が赤く腫れていたように見えたけど。

綾乃さんの方はと言うと、うつむいたまま、私たちと目を合わせてくれなかった。


優しくて真面目な性格の綾乃さんが、私たちに挨拶してくれなかったなんて…。

今までそんな事なかったから、私は強引に、きっと私たちに気づかなかったのだろうと自分を納得させた。

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