あなたが口にしたものは

浅貴るお

第1話

 料理屋・小町に、1人の男が入って来た。

 雰囲気から、何かを抱えているような感じがした。 

「いらっしゃい」

 男は、出入口近くのテーブル席に座った。

 小町は1人でやっている個人店なので、大将である幸村が、接客もこなしていた。

「ご注文がお決まりましたら、お呼び下さい」

 言って幸村は、空コップをテーブルに置き、水を注ぎ入れた。

「はい」

 今お店には、男以外のお客はいなかった。

 幸村は、出入口から外を眺めると、少しして、戸を閉め、内から鍵を閉めてしまった。

 男の背後で行われていたため、男は店に閉じ込められたことに気付いていなかった。

 幸村は厨房に戻ると、ホーロー鍋にはいっている豚汁をお椀に注ぎ入れて、男のテーブル席に持って行った。自分のものもあわせて。

「サービスです」

 言って豚汁を男の前に置いた。

「ありがとうございます」

「いえいえ、お気になさらず」

 言いながら幸村は、男の向かい席に腰を下ろした。

「どうしたんです?何か悩みごとがあるように、見えますが?お話聞きますよ」

「いいんですか?」

「ええ」

「実はーー

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