第14話 三色牙
翌日、俺はクラリスとアンナの二人と共にいつもの森に立ち入っていた。
今回は最近目撃が相次いでいるオークの討伐依頼である。
ちなみに彼女たちの服装は初日に出会ったときのものと全く同じもの。
どうやら同じ服を何着もストックしてるっぽい。
アニメとかでもキャラクターがいつも同じ服を着ているけど、実際クローゼットにズラリと同じ服が並んでいたのにはさすがの俺もたまげたぜ。
そんなことを思い出しながらボストンバッグに揺られていると、アンナがこんなことを言い出す。
「オークは若い娘が好物とのことだからな、私たちも気をつけねばなるまい。分かるなクラリス?」
「うん。でもわたしたちきっと負けないよね!」
腕を構えてふんすと自信満々に鼻を鳴らすクラリスに、アンナもふっと軽く笑った。
「クラリスもいつも通りのようだな。これなら何の問題もあるまい」
二人がそんなことを話していると、藪の中から小柄な人型の魔物が二匹姿を現す。
「グギャギャ!」
「グギギ!」
【ゴブリン】
あ、こいつらなら俺も知ってるぜ。
確かファンタジーでもお馴染みの雑魚だろ?
気色悪い緑色の肌にぽっこりと出たお腹、まさに絵に描いたような姿だ。
ゴブリンくらいなら俺でも倒せるだろ。
そう思った俺は、ボストンバッグから飛び出してゴブリン二匹の前に躍り出る。
「クケケッ!」
「ちょっとダイナ! こんなところで出てきたら危ないよ!?」
クラリスの呼び止めを尻目に、俺はゴブリンに突っ込んだ。
食らえ、
「グギャアア!!」
白く閃光を放つ俺の牙で細い腕を噛み千切られ、苦しみ悶えるゴブリン。
「ダイナ、横!」
クラリスの注意だが、俺も気づいてるぜ。
横に回り込んだつもりのゴブリンを、俺は光る尻尾でぶっ叩く。
「グゲゲ!?」
この打撃で尻餅をついたゴブリンの頭を、俺は間髪いれずに噛み砕いてトドメを刺した。
「クケエエエエ!」
息絶えたゴブリンを踏みつけて俺は勝利の雄叫びをあげる。
そうそう、これってなんか恐竜っぽくていいよな!
まだ弱そうな声しか出せないからあんまり迫力出せないけど。
「わ~、すごーい! ゴブリンをあんな簡単に倒しちゃうなんて!」
「相手がゴブリンとはいえ、ダイナにそんな力があるとは……」
「クケケッ、クカカッ」
それぞれ感心するクラリスとアンナの二人に、俺は尻尾を振って駆け寄る。
どうだ、俺すごいだろ~!
「うんうん、ダイナはすごい!」
しゃがんでからのクラリスのなでなでに、俺はうっとりしてしまう。
ああ、やっぱ女の子の手はスベスベで気持ちいいや。
「これならダイナも戦力として頼りになる。よろしく頼むぞ、ダイナ」
「クケッ」
アンナの手も背中に置かれて、俺は快く返事する。
そうして進む先々で飛び出してくるゴブリン共を手当たり次第に倒していたら、あのアナウンスが頭に流れた。
【レベルが10に上がりました。レベル条件を満たしたことにより、スキル
おお、久々のレベルアップきたーーーー!!
よし、ここはステータスオープン!
個体名:ダイナ
種族:リトルレックス
レベル:10
体力:80/80
筋力:114
耐久:68
知力:56
抵抗:44
瞬発:70
おお、レベルアップで能力値が上昇してるぜ!
これは結構な強さじゃね? ……比較対象がないからなんともいえないけど。
それと新しく覚えた
New【
俺にも属性のスキルが使えるようになるなんて!
よし、早速試しに使ってみよう。
「わわっ、ダイナの歯が三色に光ったよ~!?」
クラリスの言う通り、俺の牙が三色に点滅している。
まずは火の力をイメージすると、牙に炎がまとわれた。
「今度はダイナの口が燃えてる~!?」
燃え盛る牙にあたふたとするクラリスだけど、見た目と違って俺の口は熱く感じない。
「……どうやらダイナは平気のようだな」
感心するアンナの前で、俺はこのまま足元の小枝を噛む。
すると小枝は一瞬で消し炭になってしてしまった。
「なんか火の魔力を歯にまとわせてるみたいだね……」
次は氷の力をイメージすると、今度は牙が瞬時に凍りつく。
「今度は氷!?」
なるほど、これが氷の力か。口は冷たくならないけど、なんとなく冷気が漂ってくるぜ。
この状態ですぐそばの木に噛みついてみると、噛んだところから木の幹が凍りついた。
これも思った通り。最後は雷だ。
雷の力をイメージすると、牙がバチバチとスパークを起こし始める。
「……ここまで来たらもう何が起きても驚かんな」
目を点にするアンナの前で俺がすぐ目の前を横切った蛇をくわえあげると、感電したのか蛇は瞬時に黒焦げになってしまった。
「「あ……」」
もう二人とも口があんぐりと開いて塞がらないようで。
むふふ、俺もどんどん強くなってるぜ!
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