第6話 『裏の作戦』
時は2日たち、シーナとグレースの面会の日がやってきた。
「それでは皆さん、健闘を祈ります」
シーナは軽く膝を折って、品性を感じさせる挨拶をした。
「1番大変なのはお前だけどな」
ルキはシーナの所作に見惚れそうになったことを悟られないように軽く悪態をついた。
「そんなことありません。皆さんの役割はそれぞれ大変なことに違いは無いのですから」
「ルキ、君の役割には期待しているよ。それと、衣装や登場シーンにも拘ってくれよ」
レブンはニヤニヤしながらルキに話しかける。
ルキはそんなレブンの態度は見慣れているので軽くあしらおうとした。
「シーナとグレースにしか見られないのにこだわる必要なんであるのか?」
「当然! なんたって今回の事件は僕らの初仕事なんだから、精々カッコつけてくれよ」
「善処するよ……」
そんなやりとりにシーナは微笑みを浮かべつつ、話題を本題へと戻した。
「ではレブンは裏口からの侵入、サラは私と王宮へ向かいましょう」
「それじゃ、そっちも頑張ってな」
「はい。お互いに頑張りましょう」
「私たちも、最善を尽くしてきます」
そう言って、シーナとサラは部屋を出ていった。
「さて、ここから妾の登場じゃ」
シーナとサラを見送った直後、ルキの影から悪魔が姿を現した。
「にしても、こんなことする必要あるのか?」
そういって、ルキは部屋の隅にある掃除道具入れに突っこんでいた、グレースを取り出す。
グレースは、目の前にいる実力が違いすぎる男二人と、悪魔の存在に今にも失禁しそうな勢いで怯えていた。
「あらら、昨日の威勢はどこに消えたのやら」
「少し怖がらせすぎたかのう」
ことの発端は昨日に遡る。
昨日、シーナとサラとの夕食を終え、男女に分かれて寝室に入ったときに悪魔が現れた。そして悪魔はルキとレブンにグレースを攫う提案をした。
悪魔は攫う理由を明確には説明せず、ルキは面倒だと一蹴したのだが、レブンがノリノリで攫ってきたのだった。
グレースを攫ったとき、グレースは悪魔にやれ妖怪だのレブンに極刑だのを喚き散らし、それを黙らせるために悪魔とレブンに少々手荒な真似をされていた。
「さて攫わせた理由じゃが、我が主よ。お主は少々仲間を信用しすぎる傾向にある、と我は思っとる」
悪魔は先程までの態度と打って変わり、真剣な眼差しで答えた。
普段からヘラヘラとした悪魔の態度とのギャップにルキは面食らった。
「なんだよ藪から棒に」
「今回、主はすんなりとピカピカ娘たちと協力する道を選んだが、妾はあやつらがそれに値するか実力を見たいのじゃ」
悪魔の発言を聞いて、レブンはなるほど、と感心した。
レブンも、自分が出会ったばかりの彼女たちをいささか信じすぎていたと反省した。
ただそれも、彼女たちには2年間で凍りついていたルキの心を溶かしただけの魅力があり、レブンもその勢いにのっかっていた節はあった。
「なるほどね。そういうことなら納得だし、僕もやるべき事だと思う。ただ、シーナさんが言ってたサラさんの実力はアヴァン帝国一の剣技の持ち主らしい。それが確かなら大丈夫だとは思うけどね」
「大丈夫ならそれで良いのじゃ。ただこれから背中を預ける仲間。実力を知っておいて損は無いじゃろ?」
悪魔の発言を受けて、ルキも悪魔が単なる悪戯心だけでなく(それも半分はあるだろうが)自身の身を案じてのことだと悟った。
「確かに。じゃあこの後俺たちはシーナとサラを襲えば良いのか?」
「いや、主たちとバレては真の実力は見れぬ。そこで……」
「そこで?」
悪魔はたっぷりを間を取り、ドヤ顔で提案した。
「変装をして別人としてあやつらを襲うのじゃ!」
「「変装?」」
ルキとレブンは発言の意図が読めず、互いに顔を見合わせる。
「うむ。ちょうど良い男がそこに転がっておるじゃろ?」
悪魔が向けた視線の先には、昨晩泣き喚き、顔面がぐちゃぐちゃになった王子様がいた。
「……レブン、こいつに化けるのは任せた」
「僕だってこんな臭そうなやつの服なんてきたくないよ!」
そうしてルキとレブンは悪魔の提案であるお互いが変装して、シーナとサラの実力を図ることに決めた。
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