第2話 新しき巨人生スタート!

 (……あれ?)

 次に私が意識を取り戻した時には、既に外の世界に居た。


 何故分かるかって?

 絶賛逆さにされて尻を叩かれてるからだよ!!!


 バシーンッ!!

 痛いって!


 バッッッシーーーン!

 痛いって言ってんだろ!!!!

 「ほぎゃあぁぁ! ほぎゃあぁぁ!」


 「あぁ! 泣いた!!! エルザ、泣いてくれたぞ! 良かった本当に良かった」


 まだ目は開かないけど、この号泣してる男の人が父かな?

 声はしっかり聞こえるし、言語も分かるから助かった。


 もしかして、この世界の言語は日本語なのかな?


 「良かったぁ……ロス落ち着いて、泣いたならもう大丈夫よ。お義父さんも、本当にありがとう。お義父さんが居てくれなかったら、大切な我が子を直ぐに失う所でした」


 優しい声、この人が私の母だね。

 間違い無い。

 初めての母だ。


 「ぐあっはぁっはぁ!! かまわん、かまわん! 可愛い初孫の為じゃ! 助産師の婆さんを連れてくるぐらいお安い御用じゃわい!」


 あ、これは間違い無い。祖父だ。

 前世の祖父も、こんな感じの人だった。

 懐かしいなぁ。


 「ったく……年寄りを王都から引ったくるように連れて来るから、何事かと思えば。トールこういう大事な事はもっと早く教えな。ほら、エルザちゃん、抱いておあげ」


 私の尻を叩いてたのは、助産師だったのか。

 なら、許そう。

 まだ尻がジンジンしてるけどね。


 「ありがとうございます。わぁ、可愛いぃ!初めまして、私が貴女のママよ。よろしくね」


 此方こそ、よろしく頼むよ母。


 母が優しくて抱っこしてくれた。


 私は前世では両親を知らなかったんだよね。


 こんなに優しくて、嬉しいんだね。何かむず痒いや。


 あ! でも、母よ! 緊急事態だ!!

 「ほぎゃあぁぁ! ほぎゃあぁぁ!」


 「あらあら、どうしたのかしら」


 エルザが慌ててあやすが、一向に娘は泣き止んでくれない。


 「ほらほら、パパだよー! ベロベロバー!」

 ロスも急いであやすも、効果は無い。


 新米の父母を、助産師とトールは笑っているようだ。


 笑い声が上の方から聞こえる。


 って、笑ってるんじゃなーい!

 こっちは、お腹が空いて死にそうなんじゃー!

 HELP!! Help me!!


 必死に心の中で叫んでいると、ようやく助産師の婆さんが救いの手を出してくれた。


 「ひゃひゃひゃ、エルザちゃんや。その娘はお腹が減ってるって泣いてるのさね。早く乳をやんな」


 エルザが乳を上げると直ぐに泣き止んだ。


 「泣き止んだ……。良かったぁ」

 「うん、どっか痛いのかと思ったよ」


 頼むぜ、父母よ。

 しかし、乳美味しい!

 めちゃくちゃ美味しい!

 ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク!!!


「ひゃひゃひゃ、これからが大変だけど2人で頑張んなさいよ?

 さて、トール。いつまでも、義理の娘の乳やり見てんじゃないよ、私を王都まで帰しとくれ」


 「ぬぅ!? 儂は孫を見とっただけじゃわ! わかったわぃ。じゃあ、ロス、エルザ。儂はこの婆さんを王都まで帰してくる。しっかり娘の面倒見るんじゃぞ、直ぐに戻るからの!」


 トールは、連れてきた時と同じように助産師を掴み、王都まで走って行った。


 ドシン、ドシン、ドシッ! ドシッ!!


 わわわ?! なに何々?! 今のもしかして、祖父が走って行った音なの!?


 そっか、私が巨人なんだもん。

 両親や、祖父も当然巨人だよね。


 まだ目が開かないのが辛いなー!

 早く、外の世界が見たい!

 父母や祖父の顔を見たい!!


 そんなワクワクに包まれながら、私は眠りについた。


 ケプッ!

 あ、失礼。



 ◆◇◆



 ――――そんなこんなで、あっという間に日にちが過ぎた。


 どれぐらい過ぎたかはわからない。


 乳飲んで、寝ての繰り返しだったからね。

 早いのか遅いのか、ようやくはっきりと目が開くようになった。


 初めて父母を見た感動は何とも言えない。

 嬉しいやら、恥ずかしいやら。


 とりあえず、オムツっぽい物を交換して良いのはママだけだ。


 パパやじーじが交換しようとしたら、全力で泣いてる。

 乙女舐めんなよ!


 え? 両親や祖父の呼び方が違うって?

 仕方ないじゃん。一生懸命、パパだよー? ママだよー? って言ってくるんだもん。


 祖父に至っては、でっかい身体でじーじだよー? って言ってくるんだよ?!


 めちゃくちゃ恥ずかしいけど、嬉しそうに言ってくるからさ。

 そりゃ、情もうつるさね。


 さて、まだ飲むか泣くか寝るぐらいしか出来ないから……


 両親と祖父を紹介しとこうではないか。

 さっそく鑑定してみたのよ、心の中で唱えるだけで使えたからマジで便利!

 ラノベでも鑑定はチート確定演出ですよね、わかります。


 なんで、こんなに便利な鑑定がチートの中に無かったのかマジで謎だわ。


 まぁ、いいや。


 では、鑑定結果をどうぞー!


 ステータス画面


 名前 ロス

 年齢 36

 職業 戦斧士

 種族 ウォーリアージャイアント

 レベル 85

 HP 3650/3650

 FP 1200/1200

 攻撃力 5500

 防御力 3500

 知力 600

 速力 2000

 スキル 竜殺しLv1.街の英雄.大物食らい.狩人Lv4.熟練兵士Lv5. 族長の義息子.魔物殺し

 魔法 無し

 戦技 兜割りLv6.大戦斧Lv4.大回転Lv5.戦斧三連激Lv8

 状態異常 親バカ

 加護 無し


 茶髪のイケメンパパ、見た目は地球の北方に居たヴァイキング達に良く似てる。

 髭は生やして無いけど、野性味溢れる戦士って感じ。

 ステータスも転生前の私のステータスと比べると、めちゃくちゃ強い。

 スキルに有る項目が本当なら、私のパパはすっごく強いのかも。


 でも、私の所に居る時はデレデレの親バカ。

 状態異常になるぐらいの親バカ。


 まだ分からないけど。

 スキルにLvが有るのはまだ上が有って、無いのは単体の効果しか無いパターンなのかな?

 鑑定のLvが低いからか、詳しい効果までは見れなかったんだよね。


 ステータス画面


 名前 エルザ

 年齢 30

 職業 槍術士

 種族 スリングジャイアント

 レベル 66

 HP 2300/2300

 FP 800/800

 攻撃力 4000

 防御力 2500

 知力 550

 速力 2400

 スキル 竜殺しLv1.街の英雄.狩人Lv5.熟練兵士Lv3.族長の義娘 .魔物殺し.大食い.方向音痴LvMax

 魔法 無し

 戦技 投槍Lv9.百槍突きLv8.会心の突撃Lv4

 状態異常 親バカ

 加護 無し


 赤毛の優しいママ、これまたヴァイキングに居そうな女性。

 そばかすが良い意味で似合ってる。


 え? 想像しにくいって?

 じゃあ、アレだよ、機械の動物を弓矢で狩るお姉さんのゲームがあったでしょ?

 あのお姉さんに似てるイメージ!


 それでも分からなかったら諦めて。


 普段は優しいけど、パパやじーじが私に変な言葉を教えようとするとめちゃくちゃキレる。

 怒らしたらいけないタイプだね。


 そうそう、パパより年齢が年下なんだよね。

 レベルもパパよりは低いけど、スキルは1つだけMaxがあった!


 方向音痴!


 絶対に将来ママとは2人っきりで出掛けないぞ。

 迷子になる未来しか見えない。


 しかし、パパは戦斧士でママが槍術士か~。

 スキルの項目も結構似てるのがあるから、2人の馴れ初めを聞く日が楽しみだ。

 うっしっしっし。


 どんなドラマが有るんだろうね。


 さて、最後はじーじ!

 祖父である。



 ステータス画面


 名前 トール

 年齢 228

 職業 戦斧王

 種族 レジェンド ジャイアント

 レベル 300

 HP 160000/160000

 FP 35000/35000

 攻撃力 150000

 防御力 44000

 知力 6900

 速力 30000

 スキル 竜殺しLv8.王国の英雄.巨人達の族長 魔物殺し.大物食い.虐殺者Lv3.元戦士副団長.元魔戦将軍.亜人を救いし者.極みに到達せし者

 魔法 無し

 戦技 極兜割りLvMax.極戦斧LvMax.極大回転LvMax.極戦斧三連激LvMax.戦斧王斬りLvMax

 状態異常 爺バカ

 加護 巨神の加護


 んー、パパとママがめちゃくちゃ強いとしたら、じーじは何者なんだろうね。

 ラスボスかな?


 レベルもステータスも年齢も、スキルの数も何もかもが桁違いだ。


 ちなみに、じーじはTHEヴァイキング!っていう見た目。

 いつも着てる鎧や服も本当にヴァイキングって感じ。

 髭も凄いしね。


 髪と同じ茶色の髭を三つ編みにして顎で結んでるのが、なんか可笑しい。


 後、巨人だけど皆種族はジャイアントになるんだね。

 日本語か、英語かいまいち良く分からない作りだ。

 もしかして、自動翻訳されて見えてるのかな?


 コンニャクを食べた記憶は無いのにね。

 何の事かって?

 分かんなかったら別にいいよ。


 さてさて、最後に私のステータスだぁ!

 特と見よ!


 ステータス画面


 名前 クウネル

 年齢 0

 職業 無し

 種族 ベビージャイアント

 レベル 1

 HP 100/100

 FP 5/5

 攻撃力 60

 防御力 10

 知力 10

 速力 40

 スキル 鑑定Lv1(new).???? ????

 魔法 無し

 戦技 無し

 状態異常 やや空腹

 加護 ???


 ふふーん! 少しだけど強くなってる!

 やっぱり人間とはスペックが違うのだよ、スペックが!


 まぁね、気になる事も有るよ?


 まずは、全体的に気になるのは知力かな?

 両親も祖父も軒並み知力が低い、何故なら巨人は脳筋だから!


 いやいや、本当に。マジで脳筋なの。


 私の今世の名前見た?

 クウネルだよ? クウネル!


 めちゃくちゃ乳飲んで、めちゃくちゃ寝てるから、よし! 名前はクウネルだ! って、どんだけ安直なの?!


 まぁ、前世の名前も大概だけどね。


 今世の名前を決めたのも、前世の名前を決めたのも祖父って……。


 祖父という生き物はどこの世界でもネーミングセンスは皆無のようだ。


 そういえば、前世のお祖父ちゃんも脳筋だったね。


 いんだよ! 脳筋でも!

 皆優しいし。


 それより、じーじにも加護が有ったんだよね。 巨神の加護って。


 やっぱり、種族事に神がちゃんといる系なのかな?


 まぁ、そのトップがあの胡散臭い創造神ならあんまり期待は出来そうもないけどさ。


 もしかしたら、私の加護も????が外れたら人神の加護とかになるのかね?


 私はもう巨人だけど。


 そもそも、地球にはちゃんと神が居たのか?

 居るけど、何も手を出さない主義だったのか?


 あとは……パパもママも状態異常に掛かってる。

 親バカって……。


 じーじも、爺バカに掛かってる。


 えへへ、愛されてるなー、私。

 嬉しいけど、精神年齢は17歳だから照れるわー。


 まぁ、まだ身体思うように動かせないから今日はこれぐらいにしてやろう。


 眠いしね。


 え? そういえば、全然お腹空いたって言わないだって?


 残念でした!

 絶賛、乳飲み中です!


 ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク


 「ちょっ! ちょっとクウネル。落ち着いて飲みなさい。パパー!? 食べる物急いで持ってきてー! 栄養をもっと摂らないと、クウネルに上げる母乳が足りなくなっちゃう!」


 「えぇ!? さっきお昼食べたのに?! わかった! 親父、悪いけど何か狩って来てもらってもいいか?」


 「ぐわぁっはっはぁ! 任せておけぃ! ちょいと行ってくるわぃ!」


 ズーーンッ!

 ズシンッ! ズシンッ! ズシンッ!


 じーじが、大笑いしながら家の屋根を閉じてゆく。


 うん、自分でも何言ってるか分かんなくなるけど、事実そうなのよ。


 我が家は丸太小屋みたいな家なのね。

 で、両親も巨人だし、私も巨人だから前世で知ってる家の大きさよりもかなり大きい家の筈なんだけど。


 まだ赤ん坊だからか、いまいち家が大きいのか小さいのかピンと来なかったのよ。


 もしかして、巨人でもそんなに普通の人間と大きさは変わらないのかなー? って思ってたら。


 ある日、突如として屋根が持ち上がってさ。


 顔を出したのが、さっき狩りに出掛けたじーじなのよ。


 はぁ?! ってなるさ。

 そりゃ、なるさ。


 丸太小屋でさえ凄く大きいサイズだろうに、その家をパカって開けるのよ。


 どんだけデカイのじーじ。


 じーじのスキルに、«極みに到達せし者»っていうのが有ったから本当にラスボスかな?


 私にとっては、初孫にデレデレのお祖父ちゃんなんだけどね。


 あー、やっとお腹が満たされたー。

 本当にママの乳は最高!


 私のせいで食べる量がとんでもない事になってるけど、許しておくれ。ママのスキルに«大食い»が有ったぐらいだから、大変な思いをさせているのだろう。


 ありがとうママ、私大きく育つよ。



 さて、今度こそ寝るか。

 早く外の世界が見たいけど、寝る子は育つって言うしね。


 お休み、ママ、パパ、じーじ。


 ケプッ!

 あ、失礼。

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