まだ見ぬ君へ
なつちか
第1話
だいぶお腹の大きくなった妊婦だというのに電車で席に座ることを遠慮してしまう。立っている方が好きなのもあるけれど、先にくるのは遠慮だ。
前回の妊婦健診では性別がわかることを期待していた。しかし我が子はこちらに体も顔も向けてくれない。妊娠17週にもなればいよいよ、と思っていただけに少し落胆してしまった。
男の子だったらいいなぁ、と旦那は言う。男の子なら後継ぎになるから、らしい。私はどちらでもいい。性別も家を継ぐかどうかも。
でも今日こそは、という思いがあった。偶然にも今日は私の誕生日なのだ。
逸る気持ちがそうさせたのか、今日はいつもより1本早い電車に乗ってきた。地方なので1本早いとけっこう早い。駅の改札口内のベンチに座って少し時間を潰していると、高齢のシスターらしき人物を見かけた。そういえばこの近くにはカトリック系の学校があったな。
何かいいことがありそうな気がする。
そう思いながら私はベンチから腰を上げた。
まだ見ぬ君へ なつちか @ja72
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