冬島くんは天才画伯 🎨

上月くるを

第1話 学級新聞に童話の連載




 6年A組の学級新聞に、童話『水のぼうやと黒い犬』が連載されることになった。

 夏休みの自由研究で提出したら、担任のケイコ先生が「いいんじゃない?」って。


 あたし、ヘンに目立つのいやだったんだけど、男子も女子も学級新聞になんか関心ないらしくて、物語を書いたの? 物好きだね~、っていう感じだったから、ホッ。


 でも、ケイコ先生が「じゃあ、みんな、花野さんの童話の連載に異議なしだね? となると、絵をどうするかだよね~」すかさず畳みかけたから、あたし、驚いた。



      🏫🪰



 絵って、本でいえば、挿し絵のこと? 

 素人の童話に絵、まさかや~!(笑) 


 真っ赤になったり真っ青になったりと大忙しのあたしをよそに、ケイコ先生はどんどん進めて「立候補者がいなければ先生が決めるよ、いい?」ということになった。


 で、先生が指名したのは、なんと、だれも予想しなかった冬島鉄平くんだったの。

 絵が得意な子は決まっていて、冬島くんはカスリもしなかったからマジびっくり。

 

 事実、県市のコンクールに入賞経験がある子たちは、みんな不満そうだったもの。

 でも、ケイコ先生は「学級新聞だから、思いきって大胆な発想がほしいの」って。


 ほかのことは子どもたちの意見を尊重してくれる先生が、この件では珍しく自説をまげなかったので、みんな気を呑まれ、内心はともかく、逆らう子はいなかったよ。


 ただひとり、簡単にはうんと言わなかったのは、当の冬島鉄平くんその人だった。

 目鼻口が小さくて、いま発掘し立ての土偶です~みたいな(笑)顔で困っていた。


 あたし? 正直、あたしも釈然としないというか、なぜ? という気持ちだった。

 一応の作者としては(笑)、もっと絵のうまい子に描いてほしいな~って、ね。

 

 けど、なんだかんだ言ってもみなケイコ先生ファンだからね、その件は一件落着。

 こうして、いやおうなく、花野涼香&冬島鉄平コンビが出来上がったというわけ。



 

      👧👦



 ちなみに……。


 童話『水のぼうやと黒い犬』は、冬になると凍る運命にある水のぼうやが、春から秋までいろいろな冒険をしながら、黒犬と一緒にあそんだり助けられたりするお話。


 自分で言うのもなんだけど、動物や植物をたくさん登場させているから、けっこう描きやすいと思うんだ、挿し絵。だからね、まあ、だれでもいいやって。( *´艸`)


 

 

 


 

 


 

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