第127話

「そろそろ、ライブの練習を本格的に始めなければいけない時期になってきましたね」

「そうですね」

 

 三月某日、前々から生のライブをしようという話を進めていて、今でもずっと進んではいる。


 ライブで歌う曲とかも決まってきていて、ダンス練習とかも徐々にしている。


「そこでですね、ライブ会場での物販コーナーを作ろうかなと前々から考えていて、試作品なんかも作ってみたんですけれど…」

「へ?そんな物作ってたんですか」

「はい。青様が物販を出したくないと仰るのならしませんけれど.....」

「嫌とは言いませんし、作ってもらったんですから余程のものでもない限りは出しましょうよ」


 というか、僕の性格とかを加味して作ってしまえば僕なら出してもよいと許可してくれると思って既に作っているような気がする。


 まぁ、別にいいんだけれどさ。


「じゃあ、まずは.....vの姿のアクリルスタンドですね」

「すごくよくできてるじゃないですか!!」


 滅茶苦茶精巧に作られていて、格好いいし可愛い。


「他には…」


 僕の顔がついているステッカーとか、下敷きとか、団扇とかぬいぐるみとかも作られていた。


 どれも完成度が高くて、凄いなって思うけれど自分の顔こんな風にグッズとかになっているのは嬉しいけれどどこか気恥ずかしいなとも思う。


「どうでしょうか?」

「いいと思いますね、どれも完成度が高いですしリスナーのみんなも満足してくれるんじゃないかと思います」

「よかったです。では、この話も進めておきますね」

「あ、でもそれってネットでも販売しませんか?生で来れる人のほうが圧倒的に少ないわけじゃないですか。だから、少しかわいそうかなって」

「そうですね。ですので、ライブ翌日からネットでもブースを開いて帰るようにしたいと思います。多分品薄の状態がかなり先まで続くでしょうから、工場は大変でしょうね。まぁ嬉しい悲鳴でしょうから大丈夫だとは思いますけれど」


 嬉しい悲鳴で大変すぎて倒れなければいいけれど。


「そういえばですけれど、僕のメンバーシップってあるじゃないですか」

「ありますね」

「最近、メンバーシップに入ってくれている人にあんまり還元できていないと考えていて」


 メンバーシップに入ってもらっている人には悪いけれど、最近行事が立て込んでいて月に数回しかメン限配信をできていないから段々と申し訳なくなってきている。


「十分還元できていると思いますけれど」

「そうですか?」

「はい。というか青様は心底優しいというかファンのためを思って活動していますね。女性配信者でもメン限配信なんてその程度ですよ。もっと少ない時もあるくらいです。青様以外の男性配信者のメン限なんて何もないだけでお金を吸い取られるだけですから」

「そうですか.....」

「それでも、何かを返したいと思うのなら、今から適当に「ミーティング終わりましたー」ってメン限定だけに写真出せばそれだけで喜んでくれると思いますよ?」

「分かりました、やってみますね」


 自撮りをして、実際に出してみるとすぐに沢山の反応が来た。みんな喜んでくれているみたいでよかった。


 けれど、これだけでいいのかという気にもなってくる。


「青様、あなた様は十分リスナーのことを思っていますからあげすぎは時として毒にもなりますよ?」

「うーん…そうですね、分かりました」


 生ライブが終われば、落ち着いてメン限もできるようになるだろうから今はこれだけで、我慢してもらうとしますか。


 あげすぎは毒って言われちゃったし。


 






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