第29話 藤原不比等はユダなのか(^^)ノ
聖徳太子は、秦氏や蘇我氏の背景にある信仰の投影なのだから、救世主(メシア)そのものだよね。
でも、救世主(メシア)は終末にならないと出現しないんだ。
だとすると、メシア論者は必然的に、終末論者であるって事になるよね。
だからこそ、藤原氏は、終末が訪れないよう救世主(メシア)である聖徳太子を、厳重に封印したんだろうね。
キリストを銀貨三十枚で売り渡したのは、イスカリオテのユダだった。
日本書紀を編纂した藤原不比等は、あれだけ世界の神話に精通しているのだから、自分自身が、ユダであると言う事は重々承知していたと思う。
でも、果たしてユダは本当に裏切り者だったのかな?
僕には、ユダが裏切り者だとは思えないんだよね。
ユダは、キリストの復活を心から信じていたからこそ、キリストを処刑の場に送り込む事が出来たんじゃないかな。
だとすると、ユダこそがキリストの影なのであって、その狂気にも近い信仰心を考えると、キリストに匹敵する聖者って話しになるよね。
キリストを処刑場送りに出来る世界で唯一の男ユダ、と夫は、お道化るように言った。
キリストは、ユダがいたからこそ輝ける明けの明星である。
恐らく、藤原氏も、物部氏との関係を考えると、徐福と共に日本へと渡来を果たしたイスラエルの民だったんじゃないかな。
だとしたら、不比等も救世主を待ち望む、信仰心ゆえにユダを演じたって言う可能性だってあると思うんだ。
そうでなければ、あえてわざわざ、日本書紀に、聖徳太子が救世主であると連想させるように描かないと思うんだよね。
自分が何をしようが、キリストならば、必ず復活を果たすだろうし、終末はやって来る。
まあ、藤原不比等って、考えれば考える程、何を考えていたのか、分からなくなるんだよね、と夫が言うものだから、私は、藤原不比等は聖者だと思う?それとも強欲な悪人?と聞いた。
夫は、しばらく考えてから、僕としては聖者であって欲しいと思うけどね。
それも、とびきり真っ黒な聖者。
だって、物語としてみたら、そっちの方が絶対に面白いからね、と笑った。
しばらくして、仕事をひと段落させた夫が、甲府盆地は広大な墓地だと言う話しを始めた。
仏教が日本に入って来る前は、人は亡くなると、天には昇らずに地の底にある根の国へ行くと考えられていた、と言った。
甲府盆地って、ユーラシアプレート、北米プレート、フィリピン海プレートの三つのプレートがひしめき合って出来た窪(くぼ)なんだよね。
実際に、甲府盆地の真下には、深さ2kmにも及ぶ大渓谷があるんだ。
だけど、その大渓谷は、山体崩壊を起こした八ヶ岳の土砂が、長い年月を経て大量に流れ込んだ為に塞がって、今の甲府盆地の姿があるんだよ。
そう考えると、甲府盆地って、根の国、つまり黄泉の国へと直結しているって話しになるよね。
ここ最近、僕らは、発想力とか勘が冴えてる気がするけど、もしかしたら、そうしたインスピレーションを与えているのって、あの世の人達なのかも知れないよね、と夫が怖い事を言った。
夫は続けて、古代の呪術は、人の名前にかけるものだけど、その点、裕ちゃんは、僕と結婚した事で天児屋根(あめのこやね)の加護が付いたから安心だね、と言った。
私が、どう言う事かと尋ねると、僕も少し前に気が付いたんだけど、裕ちゃんは、僕と結婚して薄井から古屋の苗字に変わったよね、と言うので、しばらく私は、夫が何を言わんとしているのか考えてしまった。
そうか。
確かに私は、旧姓薄井から古屋となった。
古屋裕(ふるやゆう)は、確かに、古屋裕(こやね)と読める。
私は、ぞわぞわとしてしまい、怖いよと言った。
でもさ、裕ちゃんの前に現れた12人の仙人って、裕ちゃんの本心のような存在だと思うんだ。
だから、仮に、その12人の仙人が、裕ちゃんにやって欲しい事があったとして、そのやって欲しい事と、裕ちゃんがやりたい事が重なったなら、何かが起こると思うんだ。
私がどう言う事か分からずにいると、裕ちゃんは、仙人と出会った事で、日本の古代史や、神話についての感心を持ったんだよね。
なら、12人の仙人達は、裕ちゃんにやって欲しい事があるんだと思うよ。
私が、今までの経過を書いてみるとか?と言うと、夫は、多分、そう言う事だと思う、と言った。
陰陽道の術は、形を重要視するけれど、元々ある形を破るのには、新たな形を提示するしか方法が無いんだよ。
例えば、藤原不比等が日本の正史に仕掛けた術があったとするよね。
でも、それを破るには、それ以上の真実を提示するしかない。
僕らは、ある意味、裕ちゃんの内面に存在する12人の仙人に導かれているのだから、その体験を書いてみると良いと思うよ、と夫が言うので、私は書いてみたら何かが起こるのかな、と聞いた。
夫は、どうだろうね。
でも、もし僕達が、事実に辿り着いているなら、本当の事を書いていたなら、日本を覆っている術が解けるんじゃないかと、思うんだ。
まあ、そんなものがあればの話しだけど、と夫が言った。
私は、ふと山梨岡神社で出会ったおじさんが語った、怖い里歌の事を思い出し寒気を覚えた。
よし、コーヒーでも淹れて、少し落ち着こう。
しかし、夫の話しを聞いていたら、何だかお腹が減ってしまったな。
作るのも面倒なんで、今日はピザでも頼もうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます