第2話

 馬車の窓を開ける。

 空は青く、風はサラサラと流れていて気持ちの良い朝だった。

 鳥たちのさえずりに、私の心は明るくなった。

「スノー様、良い笑顔ですわね」

 アルマは嬉しそうに言った。


 学校に着くとアルマと仲の良い二人の男子が現れた。

 商人の息子のユーク・プライスと、騎士の息子のジュリアス・ペリーだ。

 二人はアルマが好きで、スノーのことは良く思っていない。ゲームの中ではアルマを助ける勇敢な若者だった。


「おはよう、アルマ様。スノー様とご一緒ですか?」

 ユークが心配そうにアルマに訊ねた。

「おはようございます、ユーク様。スノー様は体調が戻られたようですわ」

「おはようございます、ユーク様、ジュリアス様」


 ユークとジュリアスは微笑む私を見て、驚いた顔をした。


「さきほども微笑んでいらっしゃったんですよ」

 アルマの言葉に、ユークとジュリアスはまじまじと私の顔を見ていった。

「まだ、具合が悪いのではありませんか?」

「まあ、失礼ですわね!?」


 私が声を荒げると、ユークとジュリアスはため息をついた。

「それでこそ、スノー様です」

「……」

 私はスノーって、そんなに態度が悪かったのかと思いがっかりした。

「皆様、急がないと授業が始まってしまいますわ」

 アルマがそう言うと、ユークとジュリアスがアルマの後について歩き出した。

 私もその後について歩き出す。


「今日の授業は、魔法の基礎練習でしたわね」

 アルマが言った。

「魔法……使えるかしら?」

 私が呟くとユークがぶっきらぼうに言った。

「スノー様の魔力はこの学校で、ずば抜けた一番でしょう? 皮肉ですか?」

「意地の悪いことを言わないでくださいませ、ユーク様。スノー様は病み上がりなのですから」


 アルマはそう言って私をかばった。

 私は参考書をパラパラとめくった。

「手のひらに意識を集中させて、各属性のイメージを高める、か。……やってみないと分からないわね」

 私は三人のやや後方を歩きながら、これから初めて受ける魔法実習を想像し緊張していた。

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