第19話


 モヤモヤしたまま部活に向かうと、体育館の一箇所にみんなが集まって何やら騒ついている。


 俺は何かあったのかと、その集まりに向かっていると、誰かが俺に気付いて少し驚いたような表情で、周りに俺が来た事を知らせているようだった。その途端みんなは辺りに散ってしまった。


 なんだったんだ?もしかして俺の事話してたのか?そうだとしたら気になる。


 俺は思い切って聞く事にした。


「さっき何みんなで話してたんですか?」


 バスケ部の中でも一番話しやすく、優しい先輩に聞いた。


「あぁ、いやぁ、なんでもないよ」


 先輩は気まずそうに目線を逸らす。


「なんか俺が行った途端にみんなどっか行ったんで俺の悪口でも言ってるのかなって思ったんですけど」


「悪口なんてみんなで言うようなチームじゃないよ」


「じゃあなんですか?なんで俺の顔見て驚いてたんですか?」


「それは‥‥」


「俺気にしませんから教えて下さい」


「‥‥絶対気にしない?」


「はい」


「実は‥‥」


 そう言って先輩は言いにくそうに話してくれた。内容はこうだ。


 ゆうやが怪我をして、俺が心なしか嬉しそうだと誰かが言い始めたのが原因でゆうやが部活を辞めると噂が立っているらしい。誰が言い出したのかは先輩も知らないらしく、ゆうやが部活を辞めるって言うのも本人から聞いたわけではない為、あくまで噂らしい。


「それで、俺をハブろうと?」


「ごめん、そうゆうつもりはないんだけど他の部員もりょうやがゆうやの事を見下してるように見えたとか、心配するそぶりもないとか言い出してさ‥‥」


「そんな事ないですよ、俺ゆうやの怪我は残念に思ってるし心配もしてますよ?」


「俺はわかってるよ!でもまわりがね‥‥」


「なんですかそれ。もうこんなんじゃ練習も出来ないじゃないですか」


「ごめん」


「先輩は悪くないですよ。でも今日は帰るんで伝えてもらってもいいですか」


「わかった。言っとくよ」


 俺はすごく気分が悪くなった。誰がそんな事言い出したんだろう。もしかしてゆうやが俺の態度が気に入らなくて誰かに愚痴った?


 俺はわざわざ戻ってきて何やってるんだろう。しかし、こんなトラブル前にあったっけ?俺とゆうやはずっと仲良かったし部活でも揉める事はなかったはず。なんで違うのだろう。俺の行動に変化があったからか?


 でも当時と対して変わった事はないと思う。少なくとも心当たりはない。


 考えるのも無駄なだけか‥‥また森に行けばこの事だってうやむやなままだし。


 でも森に行こうと思ってもきっかけが分からない為今の俺にはどうすることも出来ない。


 とりあえず帰るか。俺は荷物を持って学校を出た。


 こんないい天気の日に部活が出来ないなんて勿体無い。そんな事を思いながら帰り道の河川敷を歩いていると、ふと気が付いた。


 あのガキだ、今日もサッカーしているけど一人だな。


 その時こちらに気付いた少年は俺の方に向かって走ってきた。


 そして目の前で立ち止まると一言。


「お兄ちゃん、なんでまたいるの?」


「は?なんでって‥‥‥?」


「僕ずっとここにいるけどお兄ちゃんもずっといるの?」


「俺はずっとはいないよ。てか一人で何やってんの?学校は?」


「学校は行っても意味ないよ。だって行っても行ってもまたここに戻るんだもん、何回も同じ授業受けたって意味ないよ」


「何言ってるんだ?てかお前、どっかで見た事があるような気がすんだけど‥‥」


「‥‥やっと気付いたの?」


「‥‥‥‥!!」


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