第17話



 今日は八月三十一日。



 俺たちの夏休み最後の日。



 日向と俺が東京に帰る日。



 そんな大事な日に、問題が発生していた。



 昨日は、この七星の旅館を朝八時に出ると伝えて寝たというのに、日向の姿が無いのだ。



もう、七時五十分。



日向の姿はまだ無い。



この旅館中のどこにもない。



「あいつっどこいっちまったんだ」

「日向ちゃーーん、出てきて~~!!飛行機行っちゃうよーー!!」

 俺と夏美さんは必死に日向を探すが、八時になっても出てくることは無かった。

 困ったな。どうしたんだ?部屋に行ってもいないから、寝坊でもなさそうだし。


 空港までは夏美さんが送ってくれることになっていて、今は家の前に車を止めて日向が出てくるのを待っているところだ。でも、どうやらこの敷地内にいるような感じはしない。


 もしかして、怖くて逃げたか?


 学校が怖くて、怖気づいたのか?


「夏美さん……日向の行きそうな場所ってわかります?辛い時とか……」

「あ!!どうだろう……」


 すると、玄関に女将がやってきて俺たちに言った。


「モアイん上におるちゃ」

「「モアイ!?」」

「日向は辛え時はいつもモアイん上におる。バスで行ったっちゃが」

 なるほど、あいつは俺にあった時も会う前もきっと辛くてあそこにいたのだろう。そして、今日も辛くてあそこに行ったのか?辛い?何がだ?

「あ、ありがとう女将!」


 俺は良く分からなかったが、とにかく日向を夏美さんの運転で探しに行くことにした。


「最後まで迷惑をかけたな。いろいろありがとう。あんたんおかげや」

 車に乗り込む前、女将は俺に礼を言うので俺は言った。

「いえ、こちらこそ。楽しかったです。女将も夏美さんも、日向も。みんながいてくれたから、自分に出会えた。俺、前に進めそうです。ありがとうございます」


「俺は日向に救われましたよ。日向は人生の恩人です」


 すると、女将は目を潤ませて言った。


「そりゃよかった。またいつでも来てくんない。今は急ぎな、飛行機が間に合わんごつなるちゃ」


 だから、急いださ。


「はい!夏美さん行きましょう。モアイのあの施設に今、日向がいるはずです」


 日向のところまで。

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