連喜

第1話 美須々

 本作は、「喪服の男」、「カサンドラな新妻」の続編です。

 胸糞の悪くなる話ですが、フィクションです。


 俺と美須々みずずの付き合いは長い。


 美須々ってのは、俺の数少ない友達Aさんの元奥さん。元派遣社員、美人、スタイル抜群の巨乳。初めて会った時はもう妊娠6ケ月くらいだった。


 彼女はAさんとデキ婚したのに、3か月くらいで別居してしまったんだ。

 理由はAさんが精神的におかしい人で、美須々が耐えられなくなってしまったからだった。俺は長年美須々の相談に乗っている。相談内容は、最初の頃はAさんのことだった。それから、仕事のこと、離婚の問題、家族の問題、育児、その他諸々。話題は尽きない。というか・・・彼女の悩みは尽きない。


 美須々は俺のことが好きで、会いたくてたまらないようだが、俺はLineでしかやり取りしてなかった。長年相談に乗ってるってことは、俺に下心があると思うかもしれないけど、そうじゃない。再婚相手として当てにされると困るから直接は会ってないし、プラトニックな恋愛関係でもない。じゃあ、何で?と思うかもしれないけど、ただ、人の不幸を俯瞰から見てるのが好きなんだ。


 それに、俺が気になってるのは、お母さんより息子の方。名前はそう君(仮名)。彼は発達障害の父親の血を引いている。そんな子がどんな風に大人になって行くかに興味があって、ずっと連絡を取り続けているんだと思う。


 発達障害は遺伝だと言われている。50〜80%(平均70%)の確率で受け継がれるらしく、特に男児は遺伝しやすい。


 時々、美須々から爽君の写真を送ってもらうけど、すごくかわいい。目が大きくてオムツのコマーシャルに出れそうな美形だ。俺がそう言うと「ちょっと思ったんですけど全然笑わなくて・・・愛想のない子だから無理だなって」と笑っていた。俺は「ああやっぱり・・・」と思った。


 美須々は赤ちゃんが生まれるまでは、Aさんの子供を愛せるか不安だったみたいだけど、産んでみたらすごくかわいくて、こういうきっかけでも子供を授かってよかったと言っていた。俺は美須々の母性に感動して、彼女を見直したもんだ。元は、高収入エリートを狙ってるしたたかな女というイメージだったけど、人は変わるもんだ。


 俺はちょっと彼女に会いたくなってしまった・・・。割り切った関係で。あちらも承諾するかもしれない。

 しかし、彼女が背負ってるものが大きすぎるのでやめといた。


 美須々は、誰かに話を聞いてもらいたいみたいで、毎日電話してくるんだけど、俺たちの関係はすごく奇妙だと思う。俺は人の顔を覚えられないから、街で美須々に会っても気が付かないだろう。

 でも、声はよく知っている。


 おっさんになると、若い女性の声を聴いてるだけで元気になる。

 別に話す内容が愚痴でも、他の男の話でも気にならない。

 俺は本当に暇なんだと思う。

 

  


 



 





 

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