第28話 探り合い

2022年5月2日


 次の日も追いLINEが彼からきた。

「めまい酷いねん。」

 体調は相変わらず悪いらしい。

「なんでやろう。コロナのワクチンで目眩が後遺症になる人が増えてるみたい。ワクチン打つ前から酷いなら関係ないけど。。」

「前からやね。」

「じゃあコロナとは関係ないね。。春には体調良くなるって信じてたのにね。」

「あかんね。。」

 昨年の夏に会った時、春には大殺界から抜けて体調が良くなるという話をしていた。ほぼ神頼みの話だった。彼は占いとか信じるタイプじゃないと思っていたけれど、何かにすがりたかったのかもしれない。

「でも、自暴自棄~!!って言ってた時よりちゃんと話できてるし、元気になってると思うよ。」

「今もギリギリやん。」

「ゆっくり生きていこ!無理しないで!」

 これは私が病気になった時に彼が言ってくれた言葉だ。2人でゆっくり生きて行こうという意味で言ってくれたと思っていたが、彼は既婚者だった。一体どんな気持ちで言ったんだろう。

「生きてく自信ないわ。」

「生きてて欲しい。あなたは才能もあるし。人生諦めるのはまだ早いよ。だから大丈夫だよ。」

 これはずっと機会を狙って言いたかった言葉。慰めて、褒めて、褒めたおして、調子に乗らせたかった。

「そんなことないよ。。。どんどん、悪くなる身体にもう、くたびれたわ。」

「でも頑張ってこれたよ、何年も。たまにくたびれて自暴自棄になる時もあるかもしれないけど、いつも頑張ってる。」

「Rさんの苦労に比べたら僕なんかポンコツよ。」

「私の苦労?よくわからんけど。私よりましなら大丈夫やね。楽しいこと考えていこ~w」

「ありがとうね。」

「こちらこそ。」

 最後のありがとうは調子に乗らせた証拠だと思えた。そして何となく上手く事が進んでいる気がした。


2022年5月3日


 前日は良い感じにLINEできたと自画自賛、安心していると、次の日の夕方彼から突然LINEが入った。

「あかん。。止めて。。また暴走しそう。。」一体何があったというのだ。

「どうしたん、何かあった!?」

「性欲に負けそう。。また誘われてる。止めて。」

 なんだそんな事か。何かと思った。死にたいとか言われるよりは全然ましだと思ってほっとした。

「しちゃだめ。」

「ううう。やけくそになるとどうでも良くなってしてまうねん。」

「あかんことなんかな?わからない。。」

 本当にこれはわからなかった。私は彼の彼女でもないのに、彼が誰とセックスしようが止める権利もない。それにセックスが悪いとも思わない。

「でも、それって恋愛やないやん。愛がないやん。」

「どうしたらいいんやろ。」

「彼氏できた?愛のあるセックスできてる?」どうして今私の話?

「探してない。」

「そっか。。セックスもしてないん?」

 彼は探りを入れているのか?

「そやね。してない。誘われはしたけど、断っちゃったわ。」

「誰に?」

「飲み友達。」

「彼氏と別れたって言ったから。」

「飲み友達かあ。なかなか友達として会うのは難しいよね。」

「あ、ごめん。自分のこと話し過ぎたね。。。」

 とりあえず話の流れを変えたかった。もしくは、食い付いてくるかわからなかったが少し焦らしたかった。

「そんなことない。ちゃんと話してよ。」

 あ、食い付いてきた。

「なんで聞きたいん、こんな話。。」

「そら聞きたいよ。きかせてよ。」

「大したことない話よ。」

「いいから聞かせてよ。」

 あまり焦らしすぎると聞いてくれなくなるので、今度は話す事にした。

「久々に誘われたから飲みに行って、付き合いたいって言われただけ。2年前と、4年前にも言われてて。その日は彼氏と別れた話と病気の話もして、私もどうでもよくなってたし、付き合ってもいいかと思ったけど。でも・・・。」

「うん、」

「なんかしたい気分じゃないなあと思って。その日は断って、次に会った時してもいいよって言ったんやけど、何か期待されて早く会いたそうにされたから、その気なくした。」

「そうなんや。。。やけくそなるの僕もそうやからわかるわ。」

 私は、やけくそになった訳じゃない。求められたから、させてあげてもいいか、という気持ちになったにすぎない。

「そっか。。なんかごめんね。僕のせいもあるね。」

「仕方ないよ。自分の人生やん、思うようにして欲しい。謝らなくていいし、誰のせいでもないやん。」

「こんなんゆーたらアホやけど、Rさんに会いたい。。」

「なんでアホなんかわからんけど、嬉しいよ。ありがとね。」

「勝手よな。」

「大丈夫だよ。」とだけ返事した。

 先生ならどう送るか考えながら送った。復縁活動を始めて2ヵ月と少し。やっと、彼から手応えのあるLINEがきた。やっと、やっとこの時がきたと、今までやってきた甲斐があったと思える瞬間だった。確実に復縁に近づいている、そんな自信さえも出てきた。でも、まだ気は抜けない。

「いつ会える?」

「直近では7日。」

「あーそうかぁ。。。」


 その日はそれから話は進まなかった。嫁ブログを前に見た時、7日は臨時休業だったのを知っていて私はわざとその日に会う日を設定したのだ。やっぱりこの日は会ってくれない。奥さんに勝ちたい訳ではなかったけれど、やっと会える事になって彼だって今必死なんじゃないかと思う。それでも奥さんとの予定は変更できないんだ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る