第19話 既婚ダミー
2022年3月15日
次の日、先生と相談した通り、話題を変えて私からLINEを送った。
「話変わるけど、最近って散歩したりしてる?」
「してるよ。」
「そしたら、北野天満宮の辺りはもう桜もいい感じかな?」
「かもね。全然気にしてないからわからん。」
「もし、通った時にいい感じだったら写メ送ってよ!」
「うん、わかった。咲いてたらね。」
「ありがとう!」
その後の返事はなかった。先生はこれに対する返事はなくてもいいと言った。そして一旦落ち着かせる事になった。
彼は体調を崩してから私に出会うまでの2年半の間は彼女もいなかったと言っていた。そうはいっても彼は数字が苦手なのか、その期間が変わっていたり、時系列は合っていない事が多いので確かではない。その間、友人に風俗に誘われる事もあったが、お金で女性を買うのが嫌いだったり、セフレから始める彼女を紹介しようかという話があっても、自分の性癖が変わってるから身近な人の紹介は避けていると言った。彼は頑固なところがあったし、私も彼が決めたことには口を出さないようにはしていた。神経質でクソ真面目、自分でもそう思うし、人からも言われると。そんな人がお金で女性を買ったんだ、人生で初めて。私にとってはそんなの普通やん。と思う事でも、彼にとっては違うんだと思った。彼なりに苦しんでいるんだろうか。
2022年3月18日
彼との別れのきっかけになったあのアプリ、久しぶりに登録してみると、まだ普通に彼がいた。堕ちるとこまで堕ちながら、他の誰かを探しているんだろうか。お金で買った人との関係は続いてはいないのだろうか。
少し気なったので、また友人申請してみた。今回は既婚者だと偽り、既婚ダミーとして彼が何を考えているのか少しでも探ろうと思った。その日私は休みだったし、彼はすぐに乗ってきたので、約3時間彼と話す事ができた。他人のふりとはいえ、彼と久しぶりにたくさん話せて嬉しさと、悔しさと、悲しさでいても立ってもいられず、すぐに先生に状況説明をすることになった。
「先生、実は今日彼と別れのきっかけになったアプリを覗いてみたんですね、そうするとまだ彼がいて、私は既婚ダミーとして、彼と会話をしたんです。彼、二重人格じゃないかな。
今、私とても混乱してます。後で内容はまとめておくりますね。彼、既婚と言ってました。もうほぼ確定かもしれませんね。」
「どういう状況なんですか?」
「子どもを動物園や水族館や買い物に連れて行こうとしてた彼が怖いです。。
前の彼女(私の事)は酷くて一方的に振った。とか、アプリで繋がったことがあるから警戒してる。とか、その後LINEで次に進んでねって伝えた。とか、ストーカーみたいに言われてますね。」
「なるほど。二重人格に見えますね。」
「やりとりの中では一切、母親の病気の話、
自分の病気の話は出てきませんでした。でも薬も飲んでたし耳鳴りのこともこの1年ずっと聞いてきたので。。本当のことだと思います。
あと、昨年やりとりを始めてから付き合うのに私たちは3ヶ月かかりましたが、昨日の既婚ダミーの時は、彼女探しからセックスの話までしてきて、かなり彼の気持ちの焦りを感じました。」
「彼が今何をしようとしてるのかが気になるところですね。偽物の人なのか、本性なのか、そこをもう少し探りましょうか!」
「単純に考えると、私は既婚者に騙されたアホな女という事やと思います。でも先生も協力くださるし、真実には近づけたいと思います。
今のままでは何が真実か、本意は何か、わかりません。こんな人にお金をかける価値はないかもしれませんが、人生経験として楽しみます。」
「そんなことはないと思うんですよね。。しっかり伝えますので!!やっていきましょう!!」
「お願いします!」
先生、頼もしい。やっぱり先生がいなかったら私はこの計画から挫折していたと思う。この魑魅魍魎な彼にどう立ち向かっていけばいいのか、私ひとりではわからなかったはずだ。今ではお金は多少かかりはしたが、協力してくれる強力な先生や、興信所の方々、愚痴を聞いてくれる友人が私の周りにはいる。彼はただひとりで、この私を敵に回している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます