第17話 自暴自棄

2022年3月12日


 彼にLINEを入れてから4日目、彼から突然LINEが入った。

「今まで有難う。良い人見つけてね。僕はもう無理やわ。」

 私は彼が命を絶ってしまうのではないかと不安に襲われたので、先生にすぐに連絡した。

「何かあった?話聞くことならできるよ。と返事してください。」不安でいっぱいいっぱいの気持ちで送る。

「大丈夫。ありがと。」

 なんだ。。拍子抜けした。彼からは落ち着いたような返事が返ってきた。

「良い人見つけてね。」

 しつこいな。。

「良い人と言われても、今は恋愛に目を向けてないよ。何かあったのかと心配になったわ。」

「いや。。いい友達や伴侶見つけてねって事。」

 そんなのはほっといて欲しい。あなたが言う事ではない。

「私のことを気にかけてくれてありがとう。

でも、あなたのことの方が心配。」

「心配しなくていいよ。僕は自暴自棄になって焦ってる。僕はその自暴自棄にRさんを利用したただのクズだから。セックスしたかっただけのクズやから切り捨てて。。ごめんね。じゃあね。」

「そんな風に、自分を責めないで。私は、一緒にいれた時間がとても救われたから。だからこそ、私こそ頼れる存在になりたかった。」

「僕も救われたよ。でも、自分が生きてる時間がもう少ない気がして全てに自暴自棄になってる。迷惑かけるわ。でも、Rさんと一緒にいてた時は癒されてたよ。セックスだけじゃない安心感があった。」

「そう言ってもらえて嬉しい。自暴自棄になりたい時、分かる。でも、それで傷付くとこ、見たくない。私も、大きな安心感に包まれてたよ。」

 歯の浮くようなセリフを立て続けに入れていく。私らしくない。でもこれも再び彼を手に入れる為に必要な事だ。心配と、不安と、彼とLINEができている喜びと、台詞に対して引いている自分。色んな自分が存在して、頭がおかしくなりそうだ。

「ありがと。」と彼から返事がきて、その日は終了した。


 「先生、彼が何度もしつこく、いい人見つけてね。と言ってくるのは何故なんですか?」言われ過ぎて心がしんどくなりかけたので、先生に尋ねると、「罪悪感です。」と返事が返ってきた。また罪悪感か。。


 先生には興信所で既婚者かどうか調べてもらっている事も伝えた。

「なるほど。そこは信用できるところですか?」

「はい、興信所の○○です。」

「そうですか。それなら安心ですね!」

「既婚であっても驚くことはないですが、彼が今とてもしんどい状態なら、何かしら力になりたいし、頼ってくれていいという安心感に変わってくれたらいいと思っています。」

「そうですね!彼の拠り所にしたいですね。」


 その後日付が変わった真夜中に、彼から「おやすみ」とLINEが入った。付き合っていた時、彼はどんなにしんどい日でも「おはよう」と「おやすみ」は比較的入れてくれて、別れた次の日から突然なくなったので、何とも言えない喪失感に襲われていたのだが、この久しぶりの「おやすみ」が嬉しくて、「おやすみなさい」と私も返事した後、安心感から、ゆっくり眠りにつく事ができた。もうどのくらい会っていないだろう。最後に会ったのが1月22日だったからもうすぐ2ヶ月になる。それでもまだ彼の事が好きなんだ。そう再認識した夜だった。


 ところが。。そう安心できたのも束の間。次の日、私は新たな事実に直面し、奈落の底に突き落とされる事になるのである。

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