第7話 回想編④初の対面
2021年7月6日
退院2日後の7月6日、私たちは初めての対面を果たした。ジワジワと汗が滲み出る暑い日だった。「初めまして。」お互い照れくさそうに挨拶を交わす。その時既に出会いから5ヵ月経過していたが、2人共かなり緊張していたと思う。彼は写真よりも若く見えた。そしてそのままホテルに直行した。真夏なのに時期外れのクリスマス調のラブホテル。雰囲気なんてお構い無しだった。
シャワーで汗ばんでいる体を流すことすら忘れ、2人で抱き締め合った。彼が私の顔を見つめながら「本当にいい?キスするよ?」と聞いて、私がうなずくと彼は優しく唇にキスした。その時彼は「初めてのセックスを動画に残しておきたい。」と言ってベッドの近くに携帯をセットした。それから私たちは愛し合い、彼は4度も絶頂に達した。
1度終わる度に彼は息を整え、私には腕枕をしてくれた。彼はこの時間、リラックスしてゆっくり過ごす事が好きだとよく話していた。人によってはすぐに煙草を吸い始めたり、携帯を見始めたり、シャワーをひとりで浴びに行ったりする事もある。「Rさんとこの時間をどんな風に過ごせるのか今から楽しみ。」以前からそう言っていたのでかなり期待していたと思う。私もこの時間は腕枕されながら甘えるのが好きだったので、とても期待していた。しかし彼は比較的切り替えが早く、すぐに次のセックスに入るので、私としてはもう少しゆっくり過ごす時間が欲しかったと不満が残ってしまった。
全てが終わると2人でシャワーを浴びた。そう言えば、彼は放尿を見るのも好きで、トイレに行こうとするとなかなか渋って行かせてくれなかった。シャワーを浴びながら放尿する姿も動画に納めると、彼はかなり興奮していた。
ホテルを出ると、私たちは電車に乗って卸のお店に向かった。そこで彼は店頭に出す雑貨を選び始めた。私もまた子どもの消しゴムやら鉛筆、上靴などを選び、彼がカードで支払いを済ませてくれた。払おうとすると、「お子さんに買ってあげたいから。」と言って受け取ろうとしなかったので私も甘えさせて貰った。
その後軽く食事をし、今日の感想を話し合った。「お互い忙しいし、なかなか簡単に会えないかもしれないけど、良かったらまた会いたい。」彼は照れくさそうに言った。私たちはお互いに好印象だったようである。私は彼の見た目も好きだった。綺麗な二重の大きな目と長いまつ毛がセクシーで、微笑みかけてくれる眼差しが優しかった。声は高めだったが少し早口の口調と合っていて、聞き心地がいい。私はすっかり彼の魅力にはまってしまったようだ。
また、彼はこの日私にお守りをくれた。「梅丸さんのお守り。癌封じの神社だよ。」京都御所の近くにある梅丸大神にわざわざお守りを買いにいってくれていた。私が癌になったことで、友人や会社の同僚がお守りを買ってくれる事が多かったが、彼からのお守りがいちばん嬉しかった。私はその日からそのお守りを肌身離さず持っていた。2月に彼と別れるまでは・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます